信用保証協会は、中小企業や小規模事業者の保証人となり、融資を円滑に受けられるようにサポートする公的機関です。
信用保証協会法に基づき、中小企業や小規模事業者の資金調達支援を目的として設立されています。
プロパー融資(金融機関の直接融資)を受けるのが難しい中小企業や小規模事業者でも、信用保証協会の保証があれば融資を受けやすくなります。
一般融資の保証期間は運転・設備資金とも原則10年以内ですが、信用保証協会であれば条件によってはさらに長期の融資が可能な場合もあります。
しかし、どの事業者でも必ず信用保証協会の保証付き融資を受けられるわけではありません。プロパー融資と同様に、申し込みの際には必ず審査が行われ、場合によっては融資を受けられないこともあります。
信用保証協会の審査の流れ
信用保証協会の保証付き融資の申し込み方法には、主に以下の2パターンがあります。
- 信用保証協会に直接申し込み
- 金融機関経由で信用保証協会に申し込み
申し込みの際には、信用保証協会と金融機関のどちらに申請をしても問題ありません。しかし、多く見られるのは「金融機関経由で信用保証協会に申し込み」をするケースです。
いずれも、法人代表者や実質的な経営権を持つ人を除いて、連帯保証人は原則として不要となっています。
信用保証協会は全国にあり、それぞれ管轄が決まっています。
信用保証協会に直接申し込む場合は、事業を営んでいる地域を管轄する信用保証協会に出向きましょう。直接申込みを受け付けていない協会もあるので、この点は注意が必要です。
商工会や商工会議所、中小企業団体中央会等などでも申し込み可能ですが、ここでは代表的な上記2パターンの審査の具体的な流れを紹介します。
信用保証協会に直接申し込み
融資を受ける際、スムーズに手続きが進むように流れをしっかりと抑えておきましょう。信用保証協会に直接申し込む場合は、以下の流れで審査が進みます。
- 管轄の信用保証協会の窓口に出向く
- 担当者と面談し、申込書を受け取る
- 申込書に必要事項を記入し、必要書類を添付して提出する
- 信用保証協会によって審査が行われる
- 審査通過後、信用保証協会から金融機関の融資斡旋を受ける
- 金融機関によって融資審査が行われる
金融機関による融資審査に通過したら融資が実行されます。
信用保証協会の保証付き融資の審査で大事な点は、信用保証協会と金融機関それぞれで審査が行われることです。
信用保証協会の審査では申込者が信用保証をするにふさわしいか、金融機関では融資しても問題ないかが審査されます。
信用保証協会と金融機関、どちらか一方の通過のみでは融資は実行されません。この点には充分に注意をしておきましょう。審査の過程では、訪問や面談が行われるケースもあります。
また、信用保証協会が保証を承諾したことを示す「信用保証書」については、金融機関の審査通過後に発行されます。
融資実行時には、信用保証協会が信用保証料以外に斡旋料や仲介料などを請求するケースは一切ありません。
金融機関経由で信用保証協会に申し込み
金融機関経由で信用保証協会に申し込む場合は、信用保証協会への直接申込みと流れは違いますが、二段構えで審査が行われる点に変わりはありません。以下の流れで審査が進みます。
- 金融機関の窓口に出向く
- 金融機関の融資の申し込み手続きと同時に、信用保証の申し込み手続きを行う
- 金融機関によって融資審査が行われる
- 融資審査通過後、金融機関が信用保証の申込書を信用保証協会に提出する
- 信用保証協会によって審査が行われる
- 審査通過後、信用保証協会が金融機関に「信用保証書」を送付する
そして信用保証協会が信用保証を承諾したことが金融機関に伝わったら、融資が実行されます。
この申込方法の場合、信用保証協会への連絡は金融機関が一括して行ってくれます。申込者が信用保証協会に直接連絡を取る必要は全くありません。
信用保証協会に提供する個人情報
信用保証協会の審査において、同協会が代表者個人の信用情報を調査することは基本的にはありません。
ただし、初めて信用保証協会を利用する際には、代表者個人の信用情報が確認されることがあります。もし信用情報に傷がある場合には審査が通らない可能性もあるため、この点には充分に留意しておきましょう。
また、過去に信用保証協会の保証付き融資を利用し、滞納や代位弁済(借入金の立替払い)をした履歴がないかが確認されます。
注意すべき点は、金融機関は代表者個人の信用情報をチェックするということです。これは、信用保証協会の保証付き融資の審査でも同様です。
保証付き融資であれば、代表者個人の信用情報に問題があっても融資できるという金融機関もあれば、融資不可という金融機関もあります。
信用情報に問題があっても大丈夫と油断するのではなく、問題があっても融資が受けられるかもしれない程度に捉えておきましょう。
審査の必要書類
信用保証協会の保証付き融資に申し込む際には、以下のような書類を提出する必要があります。
- 信用保証委託申込書(保証人等明細)
- 申込人(企業)概要
- 信用保証依頼書
- 信用保証委託契約書
- 個人情報の取扱いに関する同意書
- 確定申告書(決算書)
- 商業登記簿謄本
- 印鑑証明書
確定申告書(決算書)については、直近3期分の写しが求められます。またさらに法人の場合には、「別表」と「勘定科目明細」の添付も求められることになるので事前に準備が必要です。
原則的に税務署受付印があるものが必要となるため、準備を整えておきましょう。また、貸付実行時には、信用保証委託契約書の作成と提出が必要です。
上記以外に試算表や事業計画書などの書類、本人の確認書類(運転免許証、健康保険証、パスポート等)の提示が求められるケースもあります。準備に時間がかかる書類もあるので、あらかじめ金融機関や信用保証協会に確認しておきましょう。
必要に応じて銀行などに書類を揃えるための相談をしておくことも大切です。
信用保証協会の審査期間
信用保証協会の審査は1週間程度で完了します。しかし、信用保証協会の保証付き融資の申し込みの際には多数の書類を提出する必要があり、金融機関側の審査も受けなくてはなりません。
そのため、申し込みから融資実行までには、2~3ヶ月の期間を要するのが一般的です。
書類にまったく不備がなく、すべてのフローが滞りなく進めばこの期間より早く審査が完了したとの事例もあるようです。
しかしこういった事例はあくまでも例外と捉え、即日融資や短期間での融資は難しいとのスタンスは崩さないようにしましょう。信用保証協会の保証付き融資は計画的に利用することが大切です。
また、申請書類に不備があると審査にかかる時間はさらに伸びてしまいます。できる限り審査にかかる時間を短くするためにも、書類は不備なく揃えるように気を配りましょう。
信用保証協会の審査のポイント
信用保証協会の審査で主にチェックされるのは、以下の5つです。
- 利用条件を満たしているか
- 無理なく返済できるか
- 資金の使い道は何なのか
- 会社の業績に問題はないか
- 信用できる経営者か
事業の将来性や技術力なども調査されますが、特に上記のポイントが重視されます。「返済計画」や「資金の目的」「信頼性」などの点に重きが置かれていると考えていいでしょう。各ポイントの内容について、もう少し詳しく見ていきましょう。
利用条件を満たしているか
信用保証協会の保証付き融資は中小企業や小規模事業者向けの制度であり、下記の3点について細かく利用条件が定められています。
- 企業規模(資本金・従業員数)
- 業種
- 区域・業歴
この3つの利用条件をすべて満たさないと、信用保証協会の保証付き融資は受けられません。特に「企業規模」については、資本金や従業員数が細かく区分されており厳格に確認されている部分です。
3億円以下~、300人以下~など業種により要件は異なります。また、商工業について多くの業種は保証対象となりますが、農林・漁業、金融業、宗教法人、非営利団体(NPOを除く)、LLP(有限責任事業組合)など一部の業種は保証の対象外にもなっています。
条件を満たしているかわからない場合は、金融機関や信用保証協会に相談してみましょう。
無理なく返済できるか
信用保証協会の保証付き融資を利用した事業者が滞納を起こしたり、返済不能状態になったりすると、借入金の80%を信用保証協会が立替払いします。
その上で、信用保証協会が事業者に立替金の返済を求めるのですが、事業者が債務整理を行った場合は立替金が回収できなくなるかもしれません。
しかし、信用保証協会は公的機関であり、原資は税金なので使い道について責任があります。
回収不能のリスクを避けるため、融資の希望額と収益のバランスや今後の事業計画などから、無理なく返済を続けていけるかをチェックします。融資を受ける際には、必要な額を適正な計画を持って問題なく返済していくことができるのかという点を精査することが大切です。
その精査が、ひいては融資の審査通過に繋がっていくでしょう。
資金の使い道は何なのか
公的機関である信用保証協会が、何に使うのか、事業の発展に効果があるのかもわからない融資に保証を付けるわけにはいきません。
そのため、信用保証協会の審査では、資金の使い道や必要性、融資を受けることによって得られる効果などもチェックされます。
「借りられるだけ借りたい」「とりあえず借りたい」は通用しません。何のためにいくら必要なのか、それによって事業がどうなるのかを明確にしておきましょう。
事業計画書や具体的な資金用途を資料をもって論理的に説明できるような体制を整えておくことが大切です。
会社の業績に問題はないか
代位弁済やその後の立替金の回収不能リスクを避けるため、直近3期の決算書(確定申告書)から、会社の業績もチェックされます。
3期連続増収・増益であれば、審査で有利に働くでしょう。
もし赤字になっている場合は、以下の点についてしっかり説明できれば、審査に通過できる可能性があります。
- 赤字の原因
- 今後の対応策
- 融資を受けることによる効果
- 返済計画
今は赤字でも融資によって業績が改善し、きちんと返済していけるとアピールすることが重要です。
特に「返済計画」と「融資を受けることによる効果」は今後の業績を伸ばしていく上で非常に大切な要素といえるでしょう。
少しでも審査通過のメリットを高めるためにも、この点はしっかり説明できるようにしておきましょう。
信用できる経営者か
信用保証協会の審査では、経営者の経営力、意欲、信頼性なども重視されます。
提出する書類の内容がいい加減だったり、面談で適切な受け答えができないと審査に落ちてしまうでしょう。面談の際には、誠実に受け答えをすることが何よりも大切です。
今後の展望などを論理的に話せるように備えをしておきましょう。
また、前述のとおり、信用保証協会を初めて利用するときには、経営者個人の信用情報もチェックされることがあります。
信用情報に複数回の滞納や金融事故の履歴があると、信用度が下がるので注意が必要です。
特に金融事故の情報は5年~10年は各信用情報機関に残ります。過去に事故の心当たりがある際にはこの点にも留意しましょう。当然のことながら、反社会的勢力と関わりがあると判断された場合には融資はされません。
信用保証協会の審査に落ちた(融資を断られる)理由
資金が必要なときに融資の審査に落ちることは大きなダメージを伴うものですが、大切なのは落ちた後の対応です。
なぜ審査に落ちたのかを考え、対策を考えることが重要です。
- 融資の条件を満たしていない
- 債務不履行や税金・社会保険料などの滞納がある
- 事業者、法人債務整理の手続き中である
- 信用保証協会に代位弁済された借入金の返済中である
- 銀行取引停止処分を受けている
- 解散した会社とみなされている
もし審査に落ちてしまったら、上記に該当していないかを考えてみましょう。
一つひとつの原因を考えて、対策を立てていくことで融資に通る可能性が上がっていきます。
特に融資条件の見落としなどが原因であれば、充分に対策は取れるでしょう。それぞれの原因の詳細について、詳しく解説していきます。
融資の条件を満たしていない
前項で解説したように、信用保証協会の保証付き融資を利用するには、「企業規模」「業種」「区域・業歴」の利用条件をすべて満たす必要があります。
どれかひとつでも条件を満たしていないと審査に落ちてしまうので、あらかじめ利用条件について調べておきましょう。
「区域・業歴」の業歴については、要件として定められている場合とそうでない場合があります。
この点についても、事前にエリア内の信用保証協会に確認をしておくといいでしょう。
債務不履行や税金・社会保険料などの滞納がある
過去に融資を受けた際に債務不履行を起こしていたり、税金や社会保険料を滞納していたりすると、信用度が低いと判断されます。
確定申告をしていなかったり、資金の使い道が不明瞭だったりする場合も信用度が下がるので注意しましょう。
払うべきお金は確実に払い、正確に確定申告を済ませておくことが融資に通るための大切な要素です。
融資を受けるために決算書を操作、いわゆる粉飾決算を行う人もいますが、信用保証協会や金融機関は粉飾決算を警戒しています。
粉飾決算を見抜くためのさまざまな策を信用保証協会は講じており、見抜かれれば一瞬で信用がなくなります。
何よりも、粉飾決済は詐欺罪の一種であり、経営者が逮捕される可能性も多分に秘めているので絶対にやめましょう。
事業者・法人債務整理の手続き中である
破産や民事再生などの事業者・法人債務整理の手続き中の場合、融資を受けても返済不能になる可能性が高くなります。
そのため、信用保証協会の保証付き融資に申し込んでも、審査に通過することはまずありません。
債務整理の手続きが完了し、経営を立て直すことができてから融資を受けることを検討しましょう。また、事業者や法人の負債の問題については,弁護士会の債務整理相談などで相談ができます。
信用保証協会に代位弁済された借入金の返済中である
過去の融資で信用保証協会に代位弁済され、現在も立替金の返済が続いている場合は、新たな保証付き融資の審査に通過することはできません。
また、立替金を完済したとしても、一度代位弁済になると信用度が大きく下がるため、審査に通過するのが難かしくなります。
信用保証協会の保証付き融資を利用したら、代位弁済になることがないように、しっかり返済を続けましょう。
銀行取引停止処分を受けている
手形や小切手の不渡りや電子債権取引の決済不能などで銀行取引停止処分を受けている場合も、信用保証協会の審査には通過できません。
銀行取引停止処分を受けるということは、会社に十分な資金がないとみなされ、信用度が下がるためです。
会社だけでなく、経営者個人が銀行取引停止処分を受けている場合も同様なので、別の資金調達方法を考えましょう。
解散した会社とみなされている
最後に登記を行った日から12年経過すると、休眠会社として扱われます。
そして休眠会社となってから2ヶ月以内に登記や廃業手続きをしなかった場合は、みなし解散の手続きが行われます。
みなし解散となった会社は事業の実態がないとして、信用保証協会の審査に通過することができません。
信用保証協会の審査に通るコツ
信用保証協会の審査に通りやすくしたいのであれば、以下の3つのコツを押さえておきましょう。
- 事業計画書を作り込む
- 申し込み書類で自社の情報を伝える
- 認定支援機関を通して申し込む
信用保証協会の審査では、申し込みの際に提出する書類の内容が審査結果に大きく影響します。
そのため、より正確に会社の状況が伝わる書類を作ることが重要です。具体的にはどうすれば良いのか、以下で詳しく解説します。
事業計画書を作り込む
信用保証協会の審査では、事業計画書の提出を求められるのが基本です。事業計画書には以下のような内容を盛り込んで、しっかり返済していけることをアピールしましょう。
- 融資された資金の必要額と使い道
- 融資を受けることで得られる効果
- 利益を上げるための長期的な計画
- 利益を上げるための月次計画
赤字の場合は、今後どのように経営を立て直していくかも記載します。審査では書類の内容で判断される部分が多いため、内容のつじつまが合っていて、できる限り具体的な数字などを用いるようにしましょう。
事業計画書は、どのように事業を運営していくのかという具体的な行動を示す大切な書類です。練られていれば練られているほど融資の可能性は上がります。
申し込み書類で自社の情報を伝える
審査の申込書類には、内容を自由に記載できる箇所もあります。その箇所は空欄にするのではなく、自社の情報をより詳細に伝える場所として活用しましょう。
審査の担当者に多くの情報が伝わるほど、審査で有利になります。
業績の推移や経営改善の具体策、経営に対する熱意など、担当者の判断に役立つ情報を詳しく書いておきましょう。
主観的な情報を入れることも大切ですが、数字を用いた客観的なデータを多く落とし込むことで追記情報はより説得力のある内容となります。企業の将来性や今後の取り組みについてアピールをすることが大切です。
認定支援機関を通して申し込む
商工会や税理士、弁護士といった、信用保証協会の保証付き融資に強い認定支援機関経由で申し込むと、審査に通過しやすくなります。
認定支援機関では、審査で有利になりやすい書類の作り方や面談対策などを教えてもらえるからです。
一定の費用は発生しますが、得られるメリットを考えれば、専門家に相談することが結果的にはプラスに働きます。
とくに初めて信用保証協会を利用する場合は、審査でどのような点に気を付ければ良いのかがわからないこともあるでしょう。
そのようなときは専門家の手を借りるのが、問題解決の近道となります。
信用保証協会の審査をよく理解してから申し込もう
信用保証協会の保証付き融資は、プロパー融資を受けにくい中小企業・小規模事業者向けの制度です。
信用保証協会を利用すると長期借入が可能になるため、資金繰りに困っている事業者はぜひ利用したい制度となっています。
長期の運転資金や無担保融資などの融資を比較的有利な条件で受けることができるでしょう。
ただし、どんな事業者でも利用できるわけではなく、信用保証協会と金融機関の審査に通過する必要があります。
信用保証協会の審査について理解し、コツを押さえて挑めば通過しやすくなるので、下調べと準備を万全にしておきましょう。都道府県によっては相談ができるLINEアカウントを開設している場合もあります。