中小企業や創業の浅い企業が融資を受けたい時にぴったりなのが日本政策金融公庫です。
低金利で融資を受けるのによいものの、実際にどのような融資があるのか知らない方も多いかもしれません。
金利の計算方法や低金利で融資を受けるポイントも紹介しますので、日本政策金融公庫での借入を考えている方はぜひ参考にしてください。
日本政策金融公庫の金利の種類
日本政策金融公庫の金利には基準利率と特別利率があります。
基準利率
基準利率は「何の優遇もない場合の基本となる金利」のことです。目安となる金利を指します。
担保や連帯保証人なしで融資を受ける場合には基準利率が適用されます。
自分が利率の優遇を適用できるかわからない場合には、基準利率を見ておくとよいでしょう。融資を受ける際、基準利率よりも高くなることはないと言えます。
「基準利率が高い」と感じられる場合には、利率が下がる措置をしてもらえることがあります。それが、以下で紹介する特別利率です。
特別利率
特別利率は「優遇された利率」のことです。
日本政策金融公庫では、新しく事業を立ち上げた(新規性がある)場合や災害などで被害を受けた(災害性がある)場合などに特別利率が適用されます。
「諸事情により、返済に困難があるかもしれない人」のために設けられたもので、特別利率は1つだけでなく複数ある場合もあります。
特別利率適用には諸条件があるので、条件をよく確認することが大切です。適用のためには諸条件を満たす必要があるので、基準利率の場合よりも提出書類などが増える傾向にあります。
日本政策金融公庫の金利一覧
日本政策金融公庫の、担保なしの場合のもっとも基本となる金利一覧は以下の通りです。
申し込む制度や各優遇条件によって、適用される特別利率が変わります。
担保ありの場合や新規創業制度の金利を知りたい方は、日本政策金融公庫公式HPを確認してみてください。(2021年7月時点)
基準金利 | 2.06~2.55% |
---|---|
特別利率A | 1.66~2.15% |
特別利率B | 1.41~1.90% |
特別利率C | 1.16~1.65% |
特別利率D | 1.41~1.90% |
特別利率E | 0.66~1.15% |
特別利率J | 1.01~1.50% |
特別利率N | 1.76~1.95% |
特別利率O | 1.16~1.45% |
特別利率P | 1.86~2.15% |
特別利率Q | 1.66~2.15% |
特別利率R | 1.86~2.05% |
特別利率U | 1.56~1.75% |
日本政策金融公庫からの融資の利息計算方法
たとえば、運転資金のために「新規開業資金」で1,000万円の融資を受けたとします。この場合の利息を計算してみましょう。
- 融資制度:新規開業資金
- 融資額:1,000万円
- 返済期間:7年
- 金利:2.35%(基準金利の最大金利)
最初の2年は措置期間なので、1,000万円×2.35%で、各年234,996円の利息の支払いのみです。
3年目から7年目は元利均等とすると、毎年2,121,756円ずつの返済となります。
返済総額は7年で11,078,770円で、そのうち利息は1,078,770円となります。
日本政策金融公庫で特別利率が適用される主な融資は?
日本政策金融公庫で特別利率が適用される主な融資は、下記の5つです。
- セーフティネット貸付
- 中小企業経営力強化資金
- 女性、若者/シニア起業家支援資金
- 新規開業資金
- 新事業活動促進資金
セーフティネット貸付
セーフティネット貸付は社会的・経済的、もしくは災害など外的要因によって一時的に売上が下がった場合に受けられる融資です。
新型コロナの影響を受けて一時的に売上が下がってしまっている場合も、セーフティネット貸付の融資対象となります。
国民生活事業の場合は限度額が4,800万円ですが、中小企業事業の場合は7億2,000万円まで融資が下ります。
セーフティネット貸付の金利は申し込み主によって異なりますが、特別利率が適用される融資です。
中小企業経営力強化資金
認定経営革新等支援機関の指導や助言のもと、新規事業の開拓や異業種との連携などを試みる中小企業のための融資です。
融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円までと規定されています。
「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
引用:日本政策金融公庫公式HP
「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」及び「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を策定している方
上記2つにあてはまる人は、特別利率Aが適用されます。
基準利率 | 2.06〜2.55% |
特別利率A | 1.66〜2.15% |
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、女性や若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)が起業する時や事業を始めて7年以内の場合に限って受けられる融資です。
融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円までと規定されています。
特別利率A・B・C:技術やノウハウなどに新規性がある場合
引用元:日本政策金融公庫公式HP
特別利率B:地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方
特別利率C:地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方
上記のように特別利率の適用が認められていますが、土地を購入する資金にあてる場合は基準利率となります。
基準利率 | 2.06〜2.55% |
特別利率A | 1.66〜2.15% |
特別利率B | 1.41〜1.90% |
特別利率C | 1.16〜1.65% |
新規開業資金
新規開業資金は、開業する人と事業開始7年以内の人を対象とした、限度額7,200万円まで(うち運転資金4,800万円まで)の融資です。
新規開業資金は、以下のように特別利率が適用されます。
特別利率A:地域おこしやUターン目的の新規事業の場合
引用元:日本政策金融公庫公式HP
特別利率A・B・C:技術やノウハウに新規性がある場合
特別利率B:地方創生推進交付金を活用した起業支援金で新規事業を立ち上げる場合
特別利率C:地方創生推進交付金を活用した起業支援金と移住支援金の2つの交付を受けて新規事業を立ち上げる場合
基準利率 | 2.41~2.90% |
特別利率A | 2.01~2.50% |
特別利率B | 1.76~2.25% |
特別利率C | 1.51~2.00% |
新事業活動促進資金
事業の転換などや経営をより多角化する目的で、新規事業を始める企業が受けられる融資が新事業活動促進資金です。
こちらも、限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円まで)。
特別利率の条件が細かく分かれていますが、基本的にはA〜Cのいずれかが適用されます。
詳しくは、日本政策金融公庫公式HPをご確認ください。
基準利率 | 2.06〜2.55% |
特別利率A | 1.66〜2.15% |
特別利率B | 1.41〜1.90% |
特別利率C | 1.16〜1.65% |
低金利で融資を受けるためのポイント
低金利で融資を受けるためのポイントは以下の4つです。
- 担保を付ける
- 代表者が連帯保証人になる
- 特別利率が適用される融資制度の利用
- 認定支援機関のサポートを受ける
担保を提供する
土地や建物を所有しているなら、担保を提供すれば金利が1%程度低くなるかもしれません。
日本政策金融公庫には、担保の提供を希望する場合に適用される特別利率があります。
担保を用意していると貸倒れのリスクが低くなるので、その分金利を下げてくれます。ただ、基本的には日本政策金融公庫では担保を無理に提供する必要はありません。
そして、「担保が必要ない」点が日本金融政策公庫から融資を受けるメリットでもあります。担保を提供して金利を1%下げる必要があるのかどうかは、よく考えましょう。
代表者が連帯保証人になる
代表者が連帯保証人になることで、低い金利が適用されることもあります。
日本政策金融公庫の融資の大半が担保や連帯保証人を必要としませんが、希望することで経営者が連帯保証人になれる可能性も。
代表者が連帯保証人になると、担保がある場合と同様に貸倒れのリスクを下げることができるので、金利も下がります。
担保と同じで、日本政策金融公庫のメリットは連帯保証人を立てなくてもよいことです。「金利が下がる」だけでなく、将来のリスクも十分考慮するようにしてください。
特別利率が適用される融資制度の利用
上記で紹介した特別利率が適用される融資制度を利用すれば、低い金利で融資を受けられます。
特に新規創業資金制度や災害関連融資は特別利率が適用されやすいので、おすすめの融資制度です。
今はコロナ関連の融資があり、金利も優遇されています。後述の見出しで「新型コロナウイルス感染症特別貸付」について説明するので、ぜひ確認してみてください。
認定支援機関のサポートを受ける
認定支援機関のサポートを受けることで金利を下げられることもあります。
税理士や弁護士、中小企業診断士や金融機関など1,7000以上の機関が認定されています。
たとえば、中小企業経営強化力資金では、認定支援機関のサポートが融資条件となっています。認定支援機関からサポートを受けていることを示すと、特別利率が適用されます。
つまり、認定支援機関をすると、業務改善のアドバイスをもらえるだけでなく、さらに日本金融政策公庫から受ける融資の利子も考慮してもらえます。
日本政策金融公庫からの融資がおすすめな理由
日本政策金融公庫からの融資をおすすめするのには、以下のような理由があります。
- 他の金融機関より低金利
- 固定金利での融資
- 担保・保証が不要
- 融資信用実績を作れる
他の金融機関より低金利
日本政策金融公庫は国の機関です。民間企業と違って利益を第一に追求する組織ではないので、他の金融機関より低金利となっています。
創業まもない企業や中小企業など、銀行から融資を受けにくい企業のために作られた金融機関です。
もともと資金力がそこまでない企業に貸し付けるので、返済が負担にならないよう金利はそこまで高くない傾向にあります。
ただし、政府の機関が民間の事業を阻害することはあってはならないので、日本政策金融公庫だけ飛び抜けて金利が低くなっているわけではありません。
固定金利での融資
日本政策金融公庫では、固定金利で融資を受けられます。
一般の金融機関は変動金利を取ることが多いのですが、変動金利では半年ごとに金利の見直しがあります。
一方、固定金利なら返済するまで金利が一定なので、金利に振り回されません。そのため、長期的な返済計画が立てやすくなります。
日本政策金融公庫には固定金利だけでなく、「5年ごとに金利見直し」の制度もあります。融資を受ける際に、どちらの金利で返済を進めるのかを選べます。
担保・保証が不要
担保や連帯保証人なしで融資を受けられるのは、日本政策金融公庫を利用する大きなメリットだと言えるでしょう。
土地を持たないベンチャー企業や中小企業でも融資を申し込めます。また、経営者が連帯保証人にならなくてよいので、返済する上でのリスクを格段に減らすことができるのです。
確かに、担保や連帯保証人を立てておくと、金利が1%程度下がります。
しかし、担保に土地を入れてしまうと、返済が滞った際に土地を没収されてしまいます。将来のことを考えると、担保や保証が不要な点は非常に魅力的です。
融資信用実績を作れる
日本政策金融公庫から融資を受けることで、融資信用実績を作れ、次回の融資で有利になれるのもメリットです。
中小企業やベンチャー企業が銀行からプロパー融資を受けようとしても、信用力がないと断られることがめずらしくありません。
ですが、政府機関の日本政策金融公庫の審査に通り、融資を受けると、その事実が信用実績となります。その結果、次回からプロパー融資を受けやすくなります。
プロパー融資は限度額が大きいので、プロパー融資も受けられる状態だと事業の柔軟性も増します。
金利を重視する人に日本政策金融公庫がおすすめ
今回は日本政策金融公庫の金利について解説しました。
日本政策金融公庫の融資は規模が小さな企業でも借入できる融資が多数用意されており、民間の融資に比べて金利が低いものもあります。
金利を重視する人には日本政策金融公庫の融資がおすすめなので、まずは一度融資の内容と金利を確認してみてください。