日本政策金融公庫の融資制度とメリット・デメリット | 申し込みのポイントや注意点もあわせて解説!

日本政策金融公庫は、100種類以上の豊富な融資制度(2021年6月時点)を展開する政府系の金融機関の1つです。

「新規で事業を立ち上げたいけど資金が足りない」「融資を受けたいけど銀行の審査に落ちてしまった」といようなお悩みをもつ経営者や個人事業主にとって強い味方。特に創業者に対するサポートに力を入れています。

この記事では、日本政策金融公庫の融資制度とメリット・デメリットを中心に、申し込みのポイントや注意点を解説します。後半では「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の概要も解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

日本政策金融公庫は、低金利で100種類以上の豊富な融資制度をもつ政府系金融機関なので、ぜひ融資制度に申し込んでみてください。

目次

運転資金も可!日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫の融資は、事業規模や業種により大きく3種類に分けられます。

日本政策金融公庫の融資
  • 国民生活事業
  • 中小企業事業
  • 農林水産事業

国民生活事業

国民生活事業は、小規模企業や個人企業向けの小口資金を融資しており、短期の運転資金も取り扱っています。

新規開業資金や教育ローン、恩給・共済年金担保貸付も行っており、融資額の平均は約700万円です。

)利用できる人融資制度融資限度額融資期間
(うち据え置き期間)
小規模事業者一般貸付4,800万円特定設備資金:7,200万円設備資金:10年以内(2年以内)
特定設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(1年以内)
セーフティネット貸付経営環境変化対応資金:4,800万円
金融環境変化対応資金別枠:4,000万円
取引企業倒産対応資金別枠:3,000万円
設備資金:15年以内(3年以内)
運転資金:8年以内(3年以内)
新企業育成貸付7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
企業活力強化貸付7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
環境・エネルギー
対策貸付
7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
企業再生貸付別枠7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:原則15年以内(2年以内)
生活衛生関係の
事業者
生活衛生貸付
(一般貸付)
7,200万円~4億8,000万13年以内(1年以内)
教育資金が
必要な人
国の教育ローン350万円
一定の要件に該当する場合は、上限450万円
15年以内(在学期間内)
恩給・共済年金
受給者
恩給・共済年金担保貸付250万円
(担保とする年金により異なる)
4年以内
(給与期間の定めのあるものについては、当該給与期間以内)
参考: 日本政策金融公庫「融資制度一覧」公式HP

中小企業事業

中小企業事業は、中小企業向けの長期事業資金融資を行っています。

中小企業事業には多種多様な融資制度があるため、業種や企業の規模(資本金・従業員)により利用できる制度が定められています。

中小企業事業の主な融資制度は以下の通りです。

利用できる企業融資制度融資限度額融資期間(うち据え置き期間)
事業を始めて5~7年以内の
新規性・将来性のある企業など
新企業育成貸付7億2,000万円設備資金:20年以内(5年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
店舗の新築・増改築や
機械設備の導入を行う企業など
企業活力強化貸付7億2,000万円
(うち運転資金2億5,000万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
非化石エネルギー設備や
省エネルギー効果の高い設備を導入設置
または環境対策の促進を図る企業など
環境・エネルギー対策貸付7億2,000万円
(うち運転資金2億5,000万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
売上減少など業況が悪化している企業セーフティネット貸付・経営環境変化対応資金7億2,000万円
・金融環境変化対応資金別枠3億円
・取引企業倒産対応資金別枠 1億5,000万円
設備資金:15年以内(3年以内)
運転資金:8年以内(3年以内)
<アーリーDIP>
民事再生法の規定による再生手続開始の申立て等を行った企業
<レイターDIP>
民事再生法に基づく再生計画の認可決定等を受けた企業
企業再生貸付7億2,000万円
(うち運転資金2億5,000万円)
<アーリーDIP>
1年(1年以内)
<レイターDIP>
設備資金:10年以内(2年以内)
運転資金:5年以内(2年以内)
中小企業の海外現地法人等で所定の法律に基づく計画の承認又は認定を受けた企業スタンドバイ・クレジット制度1法人あたり
4億5,000万円
信用状有効期間1年以上6年以内
参考: 日本政策金融公庫「融資制度一覧」公式HP

農林水産事業

農林水産事業は、農林漁業や食品産業向けの長期事業資金を融資しています。

ここでいう食品産業とは、国産農林畜水産物を取り扱う食品加工・販売業者のことで、中小企業に限られます。

農林水産事業の主な融資制度は以下の通りです。

利用できる業者融資精度融資限度額融資期間
(うち据え置き期間)
認定農業者など農業・スーパーL資金
【個人】3億円(特認6億円)
【法人】10億円(特認20億円[一定の場合30億円])
・スーパーL資金25年以内(10年以内)
林業を営む方など林業・林業基盤整備資金(造林資金)負担する額の80%・林業基盤整備資金(造林資金)
55年以内(35年以内)
漁業を営む個人または法人など漁業船の種類や貸付金の使途により融資限度額が異なる15年以内(3年以内)
認定農業者
認定新規就農者
林業経営改善計画認定者
漁業経営改善計画認定者など
農林漁業共通・農林漁業セーフティネット資金
【一般】600万円
【特認】年間経営費等の6/12以内
10年以内(3年以内)
国産農林畜水産物を取り扱う食品加工・販売業者食品産業各融資制度に定める融資限度額以内各融資制度に定める融資期間以内
参考: 日本政策金融公庫「融資制度一覧」公式HP

日本政策金融公庫の融資を受けるメリット

銀行やノンバンクなどの一般的な金融機関ではなく、日本政策金融公庫の融資を受けることにどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリット
  • 融資の種類が豊富
  • 民間の金融機関に比べて審査に通りやすい

融資の種類が豊富

日本政策金融公庫は、100種以上の融資制度を実施する国内最大級の政府系金融機関です。

日本政策金融公庫の融資は、事業規模や業種により大きく3種類に分けられ、各事業ごとに30〜50種類の制度があります。

「国民生活事業」だけでも50種類以上の融資制度があり、その中から自分にあったものを選べます。

事業名内容融資制度の数
国民生活事業小規模事業者向けの小口事業資金個人向けの教育ローン50以上
中小企業事業中小企業向けの長期事業資金30以上
農林水産事業農林漁業者向けの長期事業資金30以上

民間の金融機関に比べて審査に通りやすい

日本政策金融公庫は、民間の金融機関に比べて融資審査のハードルが低い傾向にあります。

国内事業者の支援を目的としているため金利も低く、融資を受けやすくなっています。

民間の銀行や信用保証協会の審査に落ちてしまったケースでも、公庫の審査には通るかもしれません。

また、公庫の融資制度には、保証人を立てなくとも融資を受けられるものがあります。

一般的な金融機関では、代表者以外の保証人が必要なケースがほとんどです。この融資制度は、保証人を立てることが困難な経営者にとってメリットの1つといえます。

保証人を立てなくても利用できる主な融資
  • 小規模事業者経営改善資金
  • 新創業融資制度
  • 挑戦支援資本強化特例制度

創業者に対する融資を積極的にサポート

日本政策金融公庫には、新規に開業する人のために融資を行う制度があります。

実績のない創業期に民間の金融機関から融資を受けるのは非常に困難です。

日本政策金融公庫では、未来の計画や将来性を考慮してもらえるため、創業期の融資を実施できる可能性が高いといわれています。

しかし、日本政策金融公庫の融資制度に自分自身で申請した場合、最適な融資制度が選択できるとは限りません。

公庫では創業融資に精通した専門家がいるので、事業資金の調達について相談し、最適な融資制度を提案してもらいましょう。

低金利・無担保・無保証で融資が受けられる

上述したとおり、創業期に売上や利益などの実績が無かったとしても、日本政策金融公庫では事業資金の融資を受けられます。

低金利・無担保・無保証で受けられる融資は、以下の2種類です。

低金利・無担保・無保証で受けられる融資
  • 新創業融資制度
  • 中小企業経営力強化資金

ともに事業目的の運転資金や設備資金としての融資です。それぞれの特徴を表にまとめました。

融資制度利用条件
新創業融資制度税務申告を2期終えていない会社創業資金総額の10%以上の自己資金が必要3,000万円(うち運転資金1,500万円)
※担保・保証なし
※約2%の固定金利
設備資金:20年以内
運転資金:7年以内
中小企業経営力強化資金創業したての会社でも既存の会社でも利用可能認定支援機関による指導と助言を受けている会社設備資金7,200万円運転資金4,800万円
※無担保・無保証の場合最大2,000万円まで
※約2%の固定金利
設備資金:20年以内
運転資金:7年以内

日本政策金融公庫の融資を受けるデメリット

民間の金融機関と比べてメリットばかりに感じられる日本政策金融公庫の融資ですが、実は意外なデメリットがあります。

デメリット
  • 提出書類が多く準備に時間がかかる
  • 担当者によって対応に差がある

提出書類が多く準備に時間がかかる

日本政策金融公庫の融資のデメリットは、申し込みから決定までに時間がかかることです。

融資を受けるまでに、金融機関での手続きや自治体の承諾、信用保証協会の審査なども受ける必要があります。

そのため、申請に必要な書類も多く、作成にも時間がかかります。審査がスムーズに進行したとしても、2〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。

短期での資金調達には向かないので、即日キャッシュが必要な場合は、ビジネスローンやファクタリングなどを検討しましょう。

担当者によって対応に差がある

日本政策金融公庫で融資を受ける際は、担当者によって業種に対する知識量や融資の経験値に差があることを覚えておきましょう。

100種類以上の融資制度を抱えているので、事業者の業種も多く、担当者が必ずしもその業界に精通しているとは限りません。

しかし、日本政策金融公庫の審査では、会社の経営状況や代表者の人柄などの、決算書の数値以外の部分も審査対象です。

そのため、担当者の知識量が不足していたり、ヒアリング能力が低かったりする場合には審査にも悪影響が出てしまいます。

面談で担当者に状況を説明しても理解が難しい場合には、担当者を経験者に変更してもらうことも検討しましょう。

日本政策金融公庫の融資の流れ

日本政策金融公庫の融資の申し込みを自分自身で行う場合の融資の流れは、以下の通りです。

融資の流れ
  • 「事業資金相談ダイヤル」に電話相談
  • 日本政策金融公庫の支店窓口へ訪問
  • 必要書類の準備
  • 借入申込書と必要書類を提出
  • 日本政策金融公庫の担当者と面談
  • 担当者による現地調査・審査
  • 融資の決定
  • 融資額が指定口座に入金
  • 返済開始

また、申し込みを融資専門の認定支援機関を通して行う場合は、最初に認定支援機関に電話をします。

その後認定支援機関との間で書類を準備し、専門家から公庫に提出してもらいましょう。提出後の流れは自分自身で申し込む場合と同様です。

日本政策金融公庫の融資審査に必要な書類

日本政策金融公庫に融資を申し込むと、1週間後くらいに面接が行われます。

面接では以下の書類を持参することになるので、あらかじめ準備しておきましょう。

必要書類
  • 借入申込書
  • 住民票の写しまたは住民票記載事項証明書
  • 運転免許証またはパスポート
  • 源泉徴収票または確定申告書(控)
  • 預金通帳や領収書など支払い状況のわかるもの(最近6ヶ月分以上)
  • 決算書
  • 事業計画書
  • 借入金の返済予定表や、借入残高が分かるもの
  • 不動産の固定資産税課税明細書

融資制度の内容により、必要となる書類が変わるので注意しましょう。

また、創業者の場合は、事業計画書が重要視されます。創業前または創業間もない企業は、実績をあらわす決算書がないため、事業計画書が判断基準となるからです。

事業計画書を記載する場合には、なるべく専門用語を使わず、審査担当者が知りたい内容を端的に表現することを意識しましょう。

審査通過の確率が上がる!日本政策金融公庫へ申込むときにおさえておきたいポイント

比較的審査に通りやすいといわれる日本政策金融公庫の融資ですが、さらに審査通過の確率が上がるポイントをご紹介します。

融資制度に申込む際におさえておきたいポイントは、以下の3つです。

申込む際におさえておきたいポイント
  • 自己資金を十分に用意する
  • 事業計画は無理なく明確に
  • 保証人や担保を準備すると有利

自己資金を十分に用意する

日本政策金融公庫の融資制度で審査通過の確率を上げるためには、自己資金を十分に用意するのがおすすめです。

特に1,000万円以上の高額融資を希望しているのであれば、自己資金をある程度用意していると審査担当者の印象が良くなります。

自己資金を全く用意せずに申し込むと、事業が切羽詰まっている印象を与え、審査で不利になるでしょう。

融資の申し込み時に用意すべき自己資金は、希望する融資額の2〜3割が目安といわれています。

自己資金がない人が必ず審査を通過できないわけありませんが、不安要素は少しでも排除しておくために、できるだけ用意しましょう。

ただし、身内や知人から借金をして通帳に入金しておき、自己資金があるように見せかけるのは逆効果です。

事業計画は無理なく明確に

事業計画書は無理なく、過去の収支や売上実績などの状況を明確にし、実現可能な内容で作成しましょう。

日本政策金融公庫の審査では事業計画書の内容が重視されるため、現状に即していない計画書では審査に落ちる可能性があります。

新規事業の創業者で事業計画書の書き方がわからない場合は、日本政策金融公庫のホームページに記載されている、経営指標や創業計画書の記入例を確認しましょう。事業種別に記入例が掲載されているので、事業計画書作成の参考になります。ここに同じ業種がない場合は、できるだけ近い業種を参考にして記入しましょう。

参考サイト:日本政策金融公庫「創業の手引、創業のポイント集」

保証人や担保を準備すると有利

必ず必要というものではありませんが、保証人や担保を準備しておくと審査で有利になるといわれています。

保証人や担保があると、日本政策金融公庫側には以下のメリットがあるからです。

日本政策金融公庫側のメリット
  • 本人が返済不能になった場合、他の人に肩代わりしてもらえる
  • 担保となる不動産などを売却し、返済額を工面できる

このことから貸し倒れリスクが低いと判断され、審査に通過しやすくなります

審査に通過する確率を少しでも上げたい人は、保証人や担保を準備するのがおすすめです。

日本政策金融公庫の融資の注意点

日本政策金融公庫の融資審査を無事に通過するためには、どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

注意点
  • 信用情報に傷があると融資を受けられないことも
  • 税金の未納・滞納はご法度

信用情報に傷があると融資を受けられないことも

日本政策金融公庫の審査では、個人の信用情報を必ず調査されます。

このとき信用情報に傷があると「返済能力に問題がある経営者」と判断され、融資を断られるかもしれません。

日本政策金融公庫の審査の際に、信用情報に残っていると不利になる条件は、以下のような例です。

審査で不利になる条件過去2年以内に複数回の滞納キャッシングの債務が残っている
ほぼ審査落ちになる条件過去5年以内に61日以上の延滞
過去5年以内に債務整理
過去5年以内に強制解約
過去10年以内に自己破産

過去に長期延滞や債務整理した人は、5年から10年間、信用情報機関に異動情報が保管されます。

異動情報が残っていると審査を通過できる可能性はほぼゼロです。

過去に返済トラブルを起こしてしまった人は移動情報が消えてから公庫への申し込みをしてください。

現在カードローンのキャッシングが残っている場合は、残高を一括返済してから申し込みを検討しましょう。

税金の未納・滞納はご法度

税金の未納・滞納も融資審査に影響します。「税金の支払いができない」ということは「融資金の回収が不可能」という図式で判断されてしまうでしょう。

そもそも納税は憲法にも定められた国民の義務であるため、法律を守れない経営者ということになります。また、国が定める法律「国税徴収法」により、融資額の返済よりも税金の支払いのほうが優先されるため、審査に大きく影響するかもしれません。

税金と同様に、電気代や水道代などの公共料金の支払いも 審査の対象になります。「生活に必要な公共料金の支払いが遅れるということは、融資金額の返済も当然遅れるだろう」と判断されるためです。

税金や公共料金の未納・滞納にはくれぐれも注意しましょう。

入念な準備で日本政策金融公庫からの資金調達を成功させよう

日本政策金融公庫の融資制度とメリット・デメリットを中心に、申し込みのポイントや注意点について解説しました。

日本政策金融公庫の融資制度には100以上の種類があり、民間の金融機関に比べて審査に通りやすいメリットがあります。一方で審査には時間がかかり、担当者の対応力に差があるなどのデメリットもあることがわかりました。

しかし、国の政策の下、民間の金融機関よりも低金利でセーフティネット機能を発揮する日本政策金融公庫の融資制度は魅力的です。

この記事を参考に入念な準備を重ね、日本政策金融公庫からの資金調達を成功させましょう。

日本政策金融公庫は、低金利で100種類以上の豊富な融資制度をもつ政府系金融機関なので、ぜひ融資制度に申し込んでみてください。

会社概要

株式会社ウェイビーのアバター 株式会社ウェイビー インキュベーション・Saas事業

デジタル社長支援システム「デジ社長」シリーズを展開。
金融機関・自治体・商工会向けのデジタル社長支援システム「デジ社長」の開発。
士業・コンサルタント・先生業・BtoB企業向けのデジタル社長支援システム「デジ社長PRO」の提供。
社長のワンマン化や業務の属人化をなくすことで業績アップを支援する中小企業向けシステム「デジ社長SB」の展開。
中小企業・個人事業主の売上アップと組織/仕組みづくりを解決する成長支援プログラム等の提供。
「スモールビジネスを主役に、経営支援者と共に地域、日本を変えていく」を企業理念に掲げ、デジタルテクノロジーを主役にしイノベーションを起こしていきます。

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