日本政策金融公庫の融資は、審査結果にはよるものの「低金利で返済期間が長く設定されている」など、好条件での利用が可能です。
しかし「どんな準備が必要?」「審査落ちしたらもう借りられない?」など不安や疑問もあるでしょう。
この記事では、日本政策金融公庫の審査基準や落ちてしまう人の特徴、落ちた後の選択肢などを紹介します。
記事を読むことで、日本政策金融公庫から融資を受けるための審査に向けて、しっかりと準備できるようになります。
日本政策金融公庫の融資の申し込みを検討する際に知っておくべき情報をまとめていますので、最後まで読んでみてください。
日本政策金融公庫(旧:国民生活金融公庫)の融資の審査は厳しい?
日本政策金融公庫とは、国が株式の100%を保有している政府系金融機関で、中小企業や小規模企業の事業者に融資を行っています。
日本公庫は、民間金融機関の取組みを補完し、事業に取組む方々等を支援する政策金融機関です。
引用:日本政策金融公庫
融資制度の多くが低金利かつ長い返済期間など好条件である分、審査が厳しく通りにくいというイメージがあるかもしれません。
しかし、日本政策金融公庫には潤沢な資金源があり、赤字や低所得、創業間もないなどの理由で民間金融機関からの借り入れが難しい場合でも借り入れが見込めます。
日本政策金融公庫が用意している貸付制度は50種類以上あるため、最適な借り入れ方法を見つけられるでしょう。
中小企業事業に関連する金利については、日本政策金融公庫の公式HPで確認ください。
日本政策金融公庫の審査期間はどれくらい?
日本政策金融公庫の融資期間は、初めて融資を受ける場合と、過去に日本政策金融公庫の融資を利用したことがあるケースとで異なります。
初めて日本政策金融公庫の融資を利用する場合、必要書類の提出と面談が終わった後、審査が開始され、審査結果が出るのは最短で1週間以内、平均2週間前後です。
2度目以降の融資の場合は、チェックする項目が減るなどで審査期間が短くなり、初めてのときよりも早く審査が終わる可能性もあります。
いずれの場合も、必要書類に不備がないように揃え、追加書類がある場合は忘れず提出することがスムーズな審査につながります。
日本政策金融公庫の審査基準は?
日本政策金融公庫の審査期間は、融資の種類や融資金額などによって異なりますが、申し込みから融資実行までに3週間〜1ヶ月半前後要するとされています。
具体的な流れとスムーズに進んだ場合の最短期間の目安は、下記のとおりです。
- 申し込みと面談:約1週間
- 融資審査と契約書の到着:約10日
- 契約書の返送と融資実行:約3日
必要な書類を不備なく用意するなど、準備をしっかりすることで審査がスムーズに進み、期間を短縮できる可能性が高まるでしょう。
なお、日本政策金融公庫では、中小企業向けの融資を「創業者向け」と「一般企業向け」の2つに分けて審査します。
創業者向け融資は創業計画書に、 一般企業向け融資は決算書や返済実績、事業計画書に基づいて審査するため、それぞれ審査基準や審査期間が異なります。
創業計画書および、事業計画書などの必要書類は日本政策金融公庫公式HPからダウンロードできるので、あらかじめ内容を確認することも可能です。
日本政策金融公庫の審査落ちしてしまう人の特徴
日本政策金融公庫の審査に落ちてしまう人には共通点があります。
審査に通り融資を受けるためにも、審査に落ちてしまった人の特徴を知って対策しましょう。
- 個人の信用情報に問題がある
- 公共料金や税金の支払いの遅延がある
- 自己資金が少ない
- 経営計画に矛盾がある
- 面接での説明が不十分
個人の信用情報に問題がある
日本政策金融公庫の融資審査は、経営者や個人事業主自身の信用情報に問題がある通らないと考えておきましょう。
過去の延滞や債務整理は、個人信用情報機関に登録され審査の際に参照されます。
クレジットカードやキャッシング、カードローン、奨学金、携帯電話の割賦払いなどで滞納や未納がある場合、事故情報として記録されており審査落ちの要因となります。
お申込人(法人営業の方は法人代表者)の個人情報(各機関の加盟会員によって登録されている契約内容、返済状況等の情報)が登録されている場合には、それを与信取引上の判断(返済能力の調査または転居先の調査をいう。ただし、返済能力に関する情報については返済能力の調査の目的に限る。以下同じ。)のために利用させていただきます。
引用:公庫におけるお客さまの情報の取扱に関する同意書
- 滞納が過去2年以内に複数回ある
- 過去5年以内に長期延滞をした、または強制解約を受けた
- 過去5年以内に債務整理や自己破産をした
なお、延滞や債務整理などの情報は、KSC(全国銀行期間)やJICC(日本信用情報機構)、CIC(CREDIT INFORMATION CENTER)に1〜10年間保管されます。
個人信用情報機関 | 延滞情報の保管期間 | 債務整理情報の保管期間 |
---|---|---|
KSC (全国銀行期間) | 5年 | 10年 |
JICC (日本信用情報機構) | 1年 | 5年 |
CIC (CREDIT INFORMATION CENTER) | 5年 | 5年 |
公共料金や税金の支払いの遅延がある
公共料金や税金の支払いに遅延や滞納があることも、日本政策金融公庫の審査に通らない原因です。
日本政策金融公庫の融資の審査では、返済能力を判断する目的で、公共料金や税金の支払い状況も厳しくチェックされます。
- 所得税
- 住民税
- 法人税や事業税
- 消費税
- 持ち家の場合の固定資産税
- 賃貸の場合の家賃
- 水道やガス、電気などの公共料金
融資の審査時には、源泉徴収票や確定申告書、あるいは半年分の貯金通帳などで支払い状況を確認します。
自己資金が少ない
日本政策金融公庫の融資では自己資金の金額もポイントで、融資申し込み額に対してあまりに自己資金が少ないと審査に通りにくい傾向があります。
自己資金は、事業準備をしっかり行っていることをアピールするのに有効な要素でもあり、事業の計画性や将来的な返済能力の判断にも影響します。
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
引用:日本政策金融公庫
新創業融資の場合、「創業にかかる事業経費の10分の1以上の自己資金を所有していること」が必須条件です。
審査では直近半年分の預金通帳を開示しなければならないので、計画的に自己資金を用意しましょう。
審査のため親戚や知人から一時的に借りて自己資金があるように見せる方法もあります。
しかし見せ金は良い印象を与えません。口座のお金が急に増えることをしっかりと説明するできるように準備しましょう。
経営計画に矛盾がある
事業計画書や創業計画書に矛盾があることも、融資審査に落ちる原因です。
融資では事業計画書の提出を求められますが、売上と利益を含め、すべての項目に明確な根拠を証明する必要があります。
具体的な矛盾とは、根拠のある計画を記載していることも重要ですが、計画書と異なる内容の説明をしてしまうことです。
また、融資額をどのようにいくら使うのか、資金の使途もはっきりさせておくことが大切です。
経営計画の妥当性が提示できる事業計画書を時間をかけて丁寧に作成するとともに、必要であれば経験のある第三者や専門家にアドバイスを仰ぎましょう。
日本政策金融公庫の融資に申し込む際の事業計画書や創業計画書は、認定支援機関を通し専門家へ依頼することもできます。
認定支援機関についての詳細は後述しますが、司法書士や会計士など目的別で検索し依頼することが可能です。書類の作成はもちろん、面談に同席してくれるケースもあります。
面接での説明が不十分
日本政策金融公庫の融資担当者との面談において、説明が十分でないと審査に通貨するのは難しいでしょう。
面談は準備した資料を元に行われますが、稀に担当者から事業に関して厳しいところを突かれることもあります。
融資を受ける事業主や企業としてふさわしいかを見られる機会なので、どんな質問にも対応できるよう、念入りに準備しておきしょう。
面接は創業計画書に沿って行われます。特に「事業の見通し」の月平均「売上高、売上原価、経費」の見通し項目について、しっかりと根拠を答えられるように準備しましょう。
日本政策金融公庫に審査落ちしてしまった時の対策
万が一、日本政策金融公庫の審査に落ちてしまっても、すぐに諦める必要はありません。
審査に通らなかった際に、できる対策を見ていきましょう。
- 審査落ちした理由を理解する
- 半年後に再度申し込む
- 自己資本比率を上げる
- 認定支援機関を活用する
- 日本政策金融公庫以外の民間の金融機関に申し込む
審査落ちした理由を理解する
審査に落ちた理由を自分でしっかりと理解しておきましょう。
日本政策金融公庫を含む融資機関は、基本的には審査に通らなかった理由を答えてくれません。
ただ、審査に落ちてしまったということは、先に挙げた落ちてしまう人の特徴のどこかに理由があると考えて間違いないでしょう。
個人の信用情報や自己資金と融資希望額のバランス、事業計画、審査面談を振り返って、引っかかる部分があれば原因を把握し、改善する必要があります。
半年後に再度申し込む
日本政策金融公庫の融資審査に落ちても、半年経ったら再度申し込みが可能です。
先に述べた審査落ちの原因を改善した後に、6ヶ月以上の期間を空けてもう一度チャレンジしてみましょう。
創業間もない企業にとって、6ヶ月の業歴は審査にプラスに働く要素です。
当面の事業資金をまかなえる場合や自己資金の余剰がある人は、開業を遅らせても審査落ちの原因を確実に改善してから再度申し込むことをおすすめします。
ただ、審査落ちの原因が解消できていないと、半年以上経って再申し込みをしても審査に通らない可能性が高いので注意してください。
自己資本比率を上げる
審査に通らなかった原因が自己資金不足だった場合、自己資本比率を上げることで審査に通る可能性が高まります。
以下のように新創業融資なら「創業にかかる事業経費の10分の1以上の自己資金を所有していること」が必須条件です。
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
引用:日本政策金融公庫
自己資本比率を上げるための代表的な方法は、親族や預金からお金を集める方法と、融資希望者の所有物である車や設備などを会社の資本を売却してお金を工面する方法の2つがあります。
審査の段階で通帳に残高があることが条件なので、一時的に身近な人からお金を借りて、審査に通った後で口座からお金を引き出して返します。
しかし、審査直前に振り込まれた見せ金では良い印象を与えられません。もし身近な人からお金を一時的に借りるなら、名前や自分との関係性を説明できる準備をしておきましょう。
もう一方は、中小企業の役員借入金が資本金と同じ扱いになることを利用して、会社の資本を増やすやり方です。
ただ、創業すぐの事業や経験の浅い事業主が自己判断でやりすぎてしまうと審査に影響するので、専門家に相談して対策することをおすすめします。
認定支援機関を活用する
再申し込みをする前に、融資専門の認定支援機関の活用もおすすめです。
認定支援機関とは制度によって認定された税務や金融、財務などの専門知識や実務経験を有している税理士や弁護士、公認会計士などです。
融資専門の認定支援機関は、主に提出書類の作成や面談対策の手助けを行っており、国内に多数存在しています。
融資に関しての知識が豊富で、審査に通る確率や改善が必要なポイントなどについてもアドバイスをもらうことが可能です。
また、認定支援機関を経由した融資の場合、認定支援機関は日本政策金融公庫に融資先の事業進捗報告を2年間行うという融資制度があります。
認定支援機関が事業の状況を確認しているため、日本政策金融公庫側にとって安心して融資できるという指標になるのです。
認定支援機関を選ぶ際には、資金調達の支援実績があるか、手数料が明確に公表されているかなどを基準にすると良いでしょう。
実績豊富な認定支援機関を利用することで、融資に通る確率を少しでも上げられます。
認定支援機関は、中小企業庁の公式HPから簡単にエリア検索できるので活用しましょう。
日本政策金融公庫以外の民間の金融機関に申し込む
日本政策金融公庫の審査に落ちてしまった後、他の民間金融機関の融資に申し込むという選択もあります。
中でも信用保証協会の融資は、万が一返済ができなくなった際、保証協会が会社から受け取っていた保証料を使って代わりに返済を行うため、金融機関にとってもリスクが低く比較的審査が通りやすいでしょう。
信用保証協会が保証する保証付融資は、民間の金融機関や信用保証協会、地方自治体や商工会議所などの商工団体で受け付けしています。
ただ、日本政策金融公庫の審査落ちの原因によっては、同様の理由で融資審査に通らない可能性も出てくるので、原因がわかっている場合は改善してから別の融資に申し込みましょう。
日本政策金融公庫で融資を受けたいのであれば入念な準備が大事!
日本政策金融公庫の融資は、低金利や返済期間の長期化など、好条件で利用できるため事業融資として最初に検討したい融資制度のひとつです。
ただし、融資審査を確実に通すためには、計画的かつ丁寧な準備が欠かせません。
記事内で紹介した審査に落ちてしまった人の特徴を参考に、必要書類の準備や自己資本の用意、面談対策などを行いましょう。
万が一審査に落ちてしまっても、6ヶ月経過すれば再度申し込みが可能なので、原因を分析、改善した上で再チャレンジしてください。
スムーズな事業運営のために日本政策金融公庫の融資を活用しましょう。