すぐに資金が必要な事業者にとって、銀行融資の審査期間がどれくらいなのかという点は把握しておきたいですよね。
一般的に、新規での借入なら1ヶ月〜2ヶ月程度、追加融資なら2週間〜1ヶ月程度を見込んでおくべきだといえます。
銀行融資の審査期間が長すぎて待てないという場合にはビジネスローンで借入する選択肢もあるので、自社に合った方法で資金調達を進めましょう。
銀行融資の審査期間・日数は?融資タイプ別に解説
銀行融資にはプロパー融資・信用保証協会付き融資・銀行ビジネスローンの3つのタイプがあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
銀行融資 (プロパー融資) | 金利が低い 信用力がある証拠になる | 審査に時間がかかる 審査が厳しい |
信用保証協会付き融資 | 信用保証協会が返済保証してくれる 比較的審査に通りやすい | 審査に時間がかかる 保証料を支払わなければならない |
銀行ビジネスローン | 審査に通りやすい 審査が早い | 金利が高い 独自の利用制限などがある場合も |
銀行融資のタイプによって審査にかかる期間が異なります。
各タイプの特徴やメリット・デメリット、審査期間について以下で解説するので、自分に合った銀行融資のタイプを見つけてください。
銀行融資(プロパー融資)の場合
銀行融資(プロパー融資)とは、銀行が顧客に直接貸し付けをおこなうことです。
第三者機関が介入しないプロパー融資では、銀行が100%の責任を負います。
第三者機関の介入がない分、手数料なども発生しません。
メリット | デメリット |
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金利が低い 融資限度額が大きい | 審査が厳しい 審査に時間がかかる |
プロパー融資は金利が低く、融資限度額も大きいので事業者にとってメリットも多数あります。
ですが、もし貸し倒れが発生した場合には銀行が損を被ることになるので、審査が非常に厳しい傾向にあります。
審査が厳しい分、一度プロパー融資に通ると社会的に信用のある企業と見なされ、他の審査でも有利になることがあります。
銀行融資(プロパー融資)は全ての審査を銀行単独で行うため、審査期間はあまり長くありません。
一般的には既存取引先では1~2週間、新規取引先では3週間~1か月程度で完了します。
3,000万円以上など融資額が高額な場合は、さらに時間がかかる傾向にあるので、計画的に申し込む必要があります。
信用保証協会付き融資の場合
信用保証協会付き融資とは、事業者が各都道府県にある信用保証協会の保証を受けて、金融機関から融資を受けることです。
信用保証協会の審査を受けた後、銀行融資の審査に進みます。
メリット | デメリット |
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銀行融資の審査に受かりやすくなる | 審査の期間が長くなる 信用保証料の支払いが必要 |
途中で返済不能になった場合は、保証協会が融資額の80%~100%を保証します。
銀行は貸し倒れのリスクを避けることができるので、審査に受かる可能性が高くなります。
信用保証協会付き融資では、先に信用保証協会が独自の審査をおこないます。
金融機関では信用保証協会が発行した保証書を受理してから審査を開始するため、審査にかかる期間は比較的長くなります。
一般的には既存取引先では2~3週間、新規取引先では1~1.5か月程度です。
そのため、急ぎの融資には向いていません。
事業者が信用保証協会付き融資を受けると、信用保証料の支払いが必要です。原則として融資を受ける際に一括で信用保証協会に支払うことになっています。
銀行ビジネスローンの場合
通常の銀行融資が受けづらい小規模事業者や、急ぎの融資を希望する事業者に対応しているのがビジネスローンです。
上記2つのローンに比べて門戸が広くなっています。
メリット | デメリット |
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審査期間が短い 審査に通りやすい | 融資額の上限が低い 金利が高め |
銀行ビジネスローンの審査は、原則スコアリング方式でおこなわれます。そのため、通常の銀行融資に比べて審査時間が早いのが特徴です。
一般的には既存取引先では1週間、新規取引先では2週間程度です。
しかし、ビジネスローンには融資額に上限があったり、金利が通常の銀行融資より割高であるなど、デメリットがあります。
また、その銀行とすでに関係がある顧客だけが利用できるなどの利用制限もあります。
銀行ビジネスローンはプロパーローンよりも金利は高く、手続きが煩雑で融資までに時間がかかることがあるので、資金調達の目的によっては適さないこともある点に気をつけてください。
また、金利が低く条件がよいビジネスローンは信用保証協会の保証付きを条件とするものもあり、結局信用保証協会の審査期間と保証料が必要となる場合もあります。
銀行融資の審査の流れ
銀行融資には最短でも1週間、長ければ1か月以上の時間がかかります。具体的にはどのような流れで審査がおこなわれるのでしょうか。
銀行の融資審査は以下の5つのステップで進められます
- 融資の申込
- 必要書類を銀行に提出
- 担当者と融資面談
- 審査
- 融資実行
それぞれの段階でどのような審査が行われるのかを確認していきましょう。
必要な資料や用意すべきものについても説明します。
融資の申込
はじめに融資の申し込みをおこないます。
まずは、申し込みたい融資に目処をつける必要があります。
融資の申し込み方は以下の2つの方法が一般的です。
- 融資を受けたい銀行に直接訪問して申し込む
- 会社に訪問してきた銀行の担当者に相談をする
もし会社に銀行の担当者が定期的に訪問してくるなら、まずその担当者に相談することをおすすめします。
顔を知っているので融通を利かそうとしてくれることもあり、銀行に直接訪問して申し込むよりも融資を受けやすいと言われています。
融資が必要な期間の2か月前を目安に申し込むようにしましょう。
必要書類を銀行に提出
経営や財務の状況・返済計画などを示す書類を提出します。
提出書類は銀行から指示があります。
損益計算書 | 会社の利益についてまとめた資料 |
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貸借対照表 | 決算時の財務状況を示す資料 |
試算表 | 決算のための集計の一覧表 |
事業計画書 | 事業計画を示した資料 |
資金繰り表 | 資金繰りの状況や計画を示した資料 |
本人確認書類 | 免許証・マイナンバーカードなど |
これらの書類をもとに融資可非の審査がおこなわれるので、丁寧な書類作成を心がけましょう。
あまりにも書類漏れが多いと銀行の担当者からの印象が悪くなってしまいます。
そのため、書類はしっかりと事前に揃えることは基本中の基本だと考えておいてください。
面談の前後で追加資料を求められることもあります。
その時も、なるべく早く、正確な資料を用意することが大切です。
担当者と融資面談
銀行担当者との面談は、書類だけでは分からない定性的な部分を見極める重要なステップです。
担当者とのやりとりの中で、事業者の人柄や力量・将来のビジョンなどを見られます。面談ではさまざまな質問をされますが、代表的なものは以下の5つです。
- 創業や事業の動機
- 事業の具体的な内容
- 事業計画や資金繰り計画が現実的かどうか
- 事業がうまくいかなかった場合の対策
- 自己資金はどのくらい用意できているのか
どれも基本的なもので、書類作成時にあらかじめ考えておくべきことです。
この他にもさまざまな質問が予想されます。どのようなことを聞かれても自分の言葉で答えられるように準備して臨みましょう。
必ず聞かれるのが自己資金の額と、自己資金を用意した方法です。自己資金の根拠となる銀行の通帳などをあらかじめ用意しておくことをおすすめします。
また、1年以内に家賃や公共料金、クレジットカードなどの未払いがあればその理由を深く聞かれる可能性があります。
融資に申し込むなら1年前から未払いや支払いの遅れがないよう気をつけましょう。
審査
提出した書類を銀行の各担当者が審査して、融資をするかどうかを決めます。
もし書類に不備があれば担当者から連絡が来るので、早急に提出しましょう。
- 融資の可否
- 融資額
- 金利
- 返済期間 など
- 融資希望額や条件によっては審査に時間がかかる
- 特に信用協会保証付き融資は審査期間が長い
条件が厳しい場合や金額が大きい融資は本店での決裁となるため、結果が出るまでさらに時間がかかります。
審査の長さや審査ハードルは、プロパー融資なのか、銀行ローンなのか、信用協会付き融資なのかで差があります。
特に信用協会保証付き融資は、審査期間がもっとも長くなる傾向にあることには留意しておきましょう。
前述した通り、先に信用協会が審査してから、さらに金融機関が審査するからです。
また、信用協会の審査に通ったからといって必ず金融機関の審査にも通るわけではないことには留意しておいてください。
融資実行
融資審査を通過すると融資担当者から連絡が来ます。
契約書を交わすと融資が実行されて、口座に借入金が着金します。
- 契約完了後、融資を受け取るまでに1ヶ月程度かかる
- 融資実行後に返済も始まる
申し込みが完了してもすぐに着金するわけではないことに気をつけてください。
2回目以降の銀行融資の場合は審査が早くなるので、審査後1〜2週間程度で着金するようになることもあります。
また、融資が実行されると返済がスタートします。
返済計画に沿って返済を進められるよう、返済のこともしっかりと頭に入れておきましょう。
なお、据置期間を設けてもらえる場合もあります。
据置期間は利子の支払いのみで元本の返済を待ってもらえる期間のことで、据置期間があるほど猶予をもって返済できます。
据置期間を設けてもらえるなら、上手に返済計画に組み込みましょう。
そもそも審査に通らない?法人が銀行融資で押さえておきたい5つのポイント
法人が銀行の融資審査を受ける際に押さえておきたいポイントは5つあります。
- 融資額と資金使途を明確にする
- 格付けを良くする
- 担保と保証人を確保する
- 現実的かつ説得力がある事業計画を作成する
- 金融機関と良好な関係を構築する
いずれも審査通過には欠かせない項目です。
もし審査に通らないようなことがあれば、以下で解説するポイントを意識するようにしてください。
5つのポイントのうち、クリアできていないものが見つかるはずなので、その点を集中的に改善する必要があります。
融資額と資金使途を明確にする
融資額と資金使途を明確にしましょう。
何にどれだけの金額を使う予定なのかが明らかにならないと、銀行は融資をしてくれません。
融資を受けるには、具体的なプランを書類にまとめ、資金の必要性の正当性を主張する必要があります。
格付けを良くする
銀行では融資審査の際に事業者を格付けしています。
事業者の返済能力や財務状況、信用情報などから以下のように分類しています。
格付け | 融資可否 |
---|---|
正常先 | 融資可能 |
要注意先 | 慎重な審査が必要 |
要管理先 | |
破綻懸念先 | 融資不可 |
実質破綻先 | |
破綻先 |
正常先であれば信用力があると評価され、融資を受けやすくなります。
一方、要注意以下は格付けが下がるほど融資を受けるのが難しくなってしまいます。なんとか融資を受けられても金利が高くなったり、審査期間が長くかかったりする可能性が高いです。
格付けを上げるには決算書の数字の改善が必須です。
経常利益の比率を上げる、売掛金や在庫の圧縮で手元資金を増やすなど、できることから取り組みましょう。
ただし、銀行による格付けは非公開なので、自社のランクを知ることはできません。
プロパー融資は格付けが厳しいため、融資のハードルが高くなっています。
融資担当者からそれとなく聞いたり、審査のためのアドバイスを求めてみるとよいかもしれません。
担保と保証人を確保する
売り上げが低い・経常利益率が低いなど、審査でマイナスとなる面がある場合、担保を示すことで多少カバーできる可能性があります。
担保は大きく分けると人的担保と物的担保の2種類があります。
人的担保 | 物的担保 |
---|---|
保証人 連帯保証人 | 不動産 有価証券 など |
人的担保はいわゆる保証人で、融資を受けた人が返済できない場合に代わりに返済を行う人のことです。
- 保証人と連帯保証人は違う
- 担保に入れたものは差し押さえとなることもある
「保証人」と「連帯保証人」の2種類ありますが、連帯保証人の方が返済責任が重くなる点に注意しておきましょう。
種類 | 内容の違い |
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保証人 | 債務者が返済できない時の強制執行を拒否できる 主債務者に資金がある時には強制執行を拒否できる 保証人の数だけ頭数を割った分のみの返済でよい |
連帯保証人 | 債務者が返済できない時の強制執行を拒否できない 主債務者に資金がある時でも強制執行を拒否できない 返済額全額を返済しなければならない |
たとえば、債務者に返済能力があるにもかかわらず返済しない場合、保証人なら強制執行を拒否できますが、連帯保証人の場合はその権利がありません。
物的担保は不動産や有価証券を担保とすることで、返済不能に陥った場合は担保に入れた不動産から債権を回収します。
つまり、自宅を担保に融資を受けて返済ができなくなった場合には、自宅を差し出すことになります。
無担保で貸し付けをおこなう金融機関が多いですが、融資を受けられるか不安があれば一つの手段として考えてみましょう。
現実的かつ説得力がある事業計画を作成する
融資審査では、事業計画書や資金繰り表で説得力のある事業計画を示すことが大切です。
これから事業を始める場合は創業計画書で事業のビジョンを示しましょう。
現実的な計画を示すことは、しっかりと返済ができる信頼性の高い顧客であることのアピールになります。
返済計画を見据えて事業計画書を作成してください。
融資審査では事業計画書や資金繰り表と合わせて、損益計算書や貸借対照表で会社の収益性・安全性も示しておきましょう。
数字の根拠を示すことでさらに説得力が高まります。
金融機関と良好な関係を構築する
金融機関の担当者と日頃からコミュニケーションをとって、信頼関係を築いておくことも重要です。
- 普段からコミュニケーションを頻繁に取る
- その金融機関のサービスを積極的に利用する
- 銀行と関係性のある税理士や司法書士とつながる
定期的に話をするだけではなく、その銀行の定期預金を利用したり、銀行取引の回数を増やすなど実績を積み重ねておきましょう。
創業融資の際にこれまで取引がない銀行に融資を申し込むと、審査に時間がかかったり、思うような結果にならない可能性が高くなります。
融資審査に通過する確率を上げたい場合は、その銀行と取引のある税理士や司法書士の紹介を受けましょう。
実績のある取引先からの紹介であれば銀行側に安心感を与えられ、審査がスムーズに進みやすくなります。
個人事業主でも銀行融資の審査に通る?
行の融資審査は法人に限ったものではなく、個人事業主でも銀行融資は受けられます。
個人事業主が銀行の融資審査を受ける場合には、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 安定的な収入があるか
- 借入希望額や使途は明確か
- 他社からの借り入れの有無や過去に滞納はないか
特に過去の滞納に関しては厳しくチェックされます。
税金や公共料金だけではなく、クレジットカードの支払いの遅延などの信用情報に傷があると審査に影響します。
この時点で返済能力がないと判断される可能性がありますので、日ごろから滞納がないように注意しておきましょう。
個人事業主は法人よりも業績が不安定であることが多く、銀行融資に通りにくいこともあります。ですが、銀行融資に落ちても資金調達の方法は多数あります。
銀行融資の返済期間は?
銀行融資の返済期間は主に返済期間が1年を超える長期融資と返済期間が1年以内の短期融資に分かれます。
返済期間が1年以内の短期融資は貸し倒れリスクが少ないため、比較的審査に通りやすい傾向にあります。
借り入れ金を外注費や材料費などの支払いに使用して、売り上げ金を返済にあてるといったつなぎ融資としての使い方が多いです。
借り入れ金の使い道や返済の元手が分かりやすいため、銀行も融資をしやすくなります。
長期融資は借り入れ金の使途によって返済期間が変わります。一般的には、固定資産の購入にあてる設備資金で5~20年、それ以外で使用する運転資金で3~7年です。
返済期間中、継続的に利益を上げて返済できれば良いですが、思い通りにはいかない可能性もあります。甘い見通しで計画を立てると返済が困難になるので、返済期間はできるだけ長くとりましょう。
もし追加での融資を検討しているのであれば、返済期間は短い方が良いです。
一般的には30%以上を返済すれば追加融資を受けられるといわれています。
ですが、返済期間を短くした分だけ月々の負担が大きくなることも考慮して無理のない範囲で返済期間を決めましょう。
まとめ:審査期間をよく理解して、前もって融資の準備をしよう
融資審査にかかる期間を理解して余裕をもって融資の申し込みをおこなえば、タイムリーに融資を受けられる可能性が高まります。
適切な時期に必要な融資を受けることができれば事業に集中して取り組めるため、望む成果を得やすくなると言えます。
審査期間を考慮した上で、しっかりと準備を整えて融資審査に臨みましょう。