信用金庫の融資の審査基準は、銀行やノンバンクのビジネスローンによく似ています。
しかし、信用金庫は地域に根ざした経営を行っていることもあり、審査基準が異なっている部分もあります。
特に大口の融資を受けるには会員資格が必要であったりと、事前に把握しておきたい項目が多いです。
信用金庫の審査基準
事業融資を検討する際、どの金融機関を選ぶか迷う方は多いでしょう。ここでは信用金庫の審査基準や特徴について解説します。
信用金庫の審査基準はローンの種類や借入先によって異なり、明確に明示されていません。
とはいえ、一般的には以下のような項目をもとに審査しているといわれています。
- 信用金庫の会員資格の有無
- 資金の使途
- 返済余力の有無
- 経営者の人的信用
基本的には事業資金の借入で確認されることが多い項目がもとになっています。
加えて信用金庫の会員資格の有無が関わってくるのが大きな特徴です。
信用金庫の審査基準は、主に会員資格、資金の使途、返済能力が重視されます。
中小企業や個人事業主の場合、事業計画の内容や経営者の人柄も評価のポイントになります。
信用金庫と信頼関係を築くことが、融資の成功に繋がるといえるでしょう。
信用金庫の会員資格の有無
基本的に、信用金庫から融資を受けるためには信用金庫の会員資格を持っている必要があります。
そもそも信用金庫は地域の人々の相互扶助を目的として作られた金融機関であり、財源は会員の出資で賄われているのが特徴です。
株式会社である銀行が株主の利益を優先することに対して、信用金庫では会員すなわち地域社会の利益が優先されます。
さらに、営業地域は一定の地域に限定されており、集められた資金はその地域の発展に生かされている点も銀行とは異なっています。
そのため、信用金庫から融資を受けるには会員であることが前提となります。しかし、誰でも会員になれるわけではありません。
信用金庫の会員資格は信用金庫法によって定められており、以下のいずれかの条件を満たしていない人は会員になることはできません。
- 信用金庫のある住所内に事業所または住居を有するもの
- 信用金庫のある住所内で勤労をしているもの
- 信用金庫のある住所内に事業所を有するものの役員
- 従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者
- 暴力団や反社会的勢力と関わりがないこと
ただし、700万円以内の小口融資であれば、会員資格を持っていない人でも融資を受けられます。
資金の使途
信用金庫によっては資金の使途を確かめられることがあります。資金使途の計画性、妥当性はもちろん、それらを基に経営者のレベルとモラルを審査するための重要な項目です。
特に事業用資金の融資を受ける場合には、資金の使い道を明示する必要があることが多いです。
もし事業内容から資金使途に疑問点が出てくる場合、信用金庫側からは以下のようなことに使用されていないか懸念されます。
- 資金流用
- 隠れ負債
- 裏金
- 散財
審査時に資金使途の説明が求められるか否かは信用金庫によって異なります。以下のように資金使途が明示されているケースもあります。
お使いみち:事業資金(運転資金・設備資金)
引用:川崎信用金庫「この街ローン」
借入予定の信用金庫がどのような金融商品を展開しており、それぞれ借入にはどのような条件があるのかを確認しておきましょう。
「資金使途確認書類」として見積書・注文書・契約書等の提出を必須としている信用金庫もあるので、必要な書類を準備します。
一方で、個人向けのカードローンの場合は、多くが使い道自由となっています。
返済能力の有無
返済能力は融資を受ける際に必ずといって良いほど確認される項目です。
信用金庫の融資ではリスク分散を重視するため、決算書を確認する際にも「返済能力の有無」は重要なポイントになります。
返済能力の有無は、融資の使途によって判断基準が異なります。
融資の使途 | 返済能力の判断基準 |
---|---|
個人向けの借り入れ | 申し込み時の収入 貯蓄があるかどうか |
事業用資金の借り入れ | 事業の売上 自己資金 |
注意が必要なのが、個人事業主が事業用資金を借り入れる場合です。
個人事業主は確定申告時に節税対策をしすぎて、見かけ上の収入が少なくなっている人が多いため、自己資金不足を理由に融資を断られることがあります。
よって、個人事業主で信用金庫から融資を受けられる可能性を残しておきたいのであれば、節税対策はほどほどにしておいた方が良いでしょう。
経営者の人的信用
借入する人物の人的信用も重要な審査基準です。個々の信用情報は銀行で融資を受ける場合と同様、個人信用情報機関に存在する情報をもとに判断されます。
経営者本人の年収や勤続年数など過去の経験はもちろんですが、現在の取引状況や過去の返済実績も加味して審査されます。
信用情報に以下の4つがあてはまると、審査を通らない可能性があります。
- 債務整理や自己破産などでブラックリストに入っている
- クレジットカードや携帯料金などの滞納経験がある
- 事業で債務超過がある
- 税金の滞納がある
一方で、以下のような信用情報はプラス要因として加味されます。
- 年収
- 勤続年数など過去の経験
- 返済実績
- 現在の取引状況
現在の取引状況としては、定期預金や給与の振り込み、公共料金の引き落としなどが定期的に発生していると、審査のプラス要因となります。
また、経営者本人に対しても、情熱をもって会社を経営しているかどうかを見ています。
誰しもお金を貸す相手に覇気がなければ心配になるものです。経営者として事業に情熱を持ち、人生をかけて会社経営を行っていることをアピールしましょう。
信用金庫は地域の活性化、振興のために地域住民との相互扶助を目的としています。
「銀行では相手してもらえなかった」という場合でも、信用金庫なら融資を受けられる可能性があります。
信用金庫の融資の審査の流れ
信用金庫の融資の審査の流れは以下の通りです。
- 信用金庫に融資の申し込みをする
- 各種書類を準備する
- 信用金庫で審査が行われる
信用金庫の融資審査は、申請書の提出から仮審査、本審査の順に進行します。
また、信用保証協会(保証人になってくれる公的な金融機関)の審査では面談が実施されることもあります。
面談では、事業の具体的なビジョンや返済計画を明確に伝えることが重要です。審査官との信頼関係が鍵となります。
信用金庫に融資の申し込みをする
信用金庫によって利用できる融資の要件が異なるため、自身が利用できる信用金庫を事前に調べておきましょう。
融資を受けたい信用金庫が決まったら申し込みをします。
申し込みは信用金庫の窓口か電話で受け付けています。
信用金庫の営業時間は9時~15時であることが多いので、余裕を持って申し込みたい場合は午前中に問い合わせましょう。
また、信用金庫の融資は銀行と同様、プロパー融資などの特殊な融資方法を除けば信用保証協会を通すことになります。
信用保証協会は業務の都合上、月末が忙しいことが多いため、審査のスピードを早くしたいのであれば月初に申し込みましょう。
信用金庫の融資はお金を借り入れするまでに、2~3カ月ぐらい期間が必要です。余裕がある借り入れ計画を立て、実行に移すことが大切です。
各種書類を準備する
信用金庫からの融資を受ける場合には信用保証協会の審査を通過する必要があります。信用金庫で申込書類を受理してもらい、信用保証協会に提出してもらいましょう。
用意する必要書類は信用金庫ごとに異なります。また、融資の種類によっても違いますので事前に確認しましょう。
ここでは以下の3つのケースで求められる書類をご紹介します。
- 一般的なローン
- 事業用資金(起業前)
- 事業用資金(起業後)
一般的なローン | 本人確認書類 勤続年数確認書類(健康保険証など) 所得を証する書類(公的所得証明、源泉徴収票など) 資金使途を説明できる書類(学資ローン、自動車ローンなどの場合) |
---|---|
事業用資金 (起業前) | 創業計画書 印鑑証明書 自己資金等が確認できる書類 借りる物件の賃貸借契約書のコピー 支出した金額が確認できるもの 返済予定表のコピー(すでに借入がある場合) |
事業用資金 (起業後) | 創業計画書 印鑑証明書 事業に必要な許認可または写し 商業登記簿謄本(法人の場合) 個人事業の開発業等届出書(個人事業主の場合) |
上記に加え、業種や審査の厳しさによっては定款や不動産登記簿謄本などが必要です。
事業用資金の融資の場合は特に準備が必要な書類が多いので、あらかじめ必要そうなものは手元に集めておくのがおすすめです。
信用金庫で審査が行われる
必要書類の提出完了後に審査が始まりますが、審査は仮審査と本審査の2段階となります。
仮審査 | 収入や勤続年数などをもとに、 申し込み内容や金額に問題がないかチェックする |
---|---|
本審査 | 仮審査の結果と信用情報機関に問い合わせた情報をもとに、 返済能力に問題がないか確認する |
審査の結果、融資を実施しても大丈夫であると判断された場合、保証協会から信用金庫に「信用保証書」が発行されます。
信用保証協会での審査では面談を実施することもあるので頭に入れておきましょう。
「信用保証書」には融資の条件が記載されており、信用金庫は記載された条件にのっとって融資を実行します。
信用金庫の融資の審査にかかる期間
信用金庫の融資の審査にかかる期間は、信用保証協会を通す一般的なもので3週間~1ヶ月程度であることが多いです。
信用金庫によっては申込から着金までにかかる期間を約2~3ヶ月としている場合もあるので、急ぎの融資には向いていません。
信用保証協会とは、中小企業が銀行から融資を受ける際に保証人になってくれる公的な金融機関です。
信用保証協会が保証人になることによって、銀行は安心してお金を貸すことができます。
信用金庫の融資審査には、通常3週間~1ヶ月程度かかります。ただし、申請内容や繁忙期によっては、さらに時間がかかることもあります。
余裕を持ったスケジュールでの申請が望まれるので、早めの準備を心掛けましょう。
一方で、信用保証協会を介さないプロパー融資などであれば、審査は信用金庫内のみで行われるため、審査期間は短くなります。
ただし、この場合の審査は信用保証協会を介す審査よりも、厳しくなる傾向にあることを覚えておきましょう。
上記はあくまで審査にかかる期間であり、申し込みから融資までにかかる期間ではないことに注意しましょう。
特に、必要書類の準備に手こずると審査が始まるまでに不必要に時間がかかってしまいます。
なるべく早く融資を受けたいのであれば、信用金庫のホームページを確認し、あらかじめ書類を準備しておくことが重要です。
「銀行融資の審査期間は?審査の流れや個人事業主の審査についても解説!」では、銀行融資の審査にかかる期間について解説しています。信用金庫の審査期間と比較してみたい人は、ぜひご覧ください。
信用金庫の融資のメリット
信用金庫から融資を受ける場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?
- 貸し渋りや貸し剥がしのリスクが少ない
- 中小企業や個人事業主の融資に向いている
- 会員メリットが利用できる
信用金庫の融資は、地域密着型で親身な対応が期待できる点がメリットです。
地元企業とのネットワークが強固であり、融資以外の経営相談やサポートも受けやすくなります。
これは、特に中小企業にとって大きな利点となるでしょう。
貸し渋りや貸し剥がしのリスクが少ない
銀行の場合、不景気になると不良債権が増加することから、貸し渋りや貸し剥がしを行う傾向にあります。
信用金庫では財源が会員の出資で賄われているため、すぐに貸し渋りや貸し剥がしを行わず、可能な限り融資が継続されます。
銀行ならリスクを考えてためらってしまう場合でも、信用金庫なら長期的な視点で支援してくれる場合が多いです。
中小企業の融資に向いている
信用金庫は大企業よりは中小企業の取引先が多いことも特徴で、小規模の事業でも積極的に融資を行ってくれます。
特に収入が不安定になりがちな個人事業主は審査に通りにくいといわれており、メガバンクでは融資を断られる可能性が高いです。
地域社会への貢献を目的としている信用金庫は、地域内で事業を行っていれば、収入に不安があっても融資してくれる場合があります。
敷居が高いメガバンクとは異なり、信用金庫の方から定期的な訪問やヒアリングなどを行い、親密な関係を築いてくれようとします。
起業したばかりの人や、収入が前年度より大きく下がってしまった人は、まずは地元の信用金庫を当たってみるのがおすすめです。
会員メリットが利用できる
銀行の株主になったからと言って、配当以外は特にメリットはありません。
しかし、信用金庫の会員となった場合は会員限定のメリットがあります。
信用金庫会員専用のローンや会員に対する金利優遇などが、信用金庫オリジナルのメリットとして利用できます。
信用金庫の融資のデメリット
- 融資限度額が控え目
- ATMの設置数が少なくネット対応が弱い
- 金利が割高
信用金庫の融資には、大手銀行と比較して融資額やサービスの幅が限られることがあります。
また、地域限定のサービスが多く、全国展開を目指す企業には不向きな場合もあります。用途に応じた選択が必要です。
融資限度額が控え目
信用金庫は銀行と比較すると預金額が少ないため、融資の規模も小さい案件が中心です。
そのため融資に回せる原資が少なく、融資限度額が控え目になってしまうことがデメリットといえます。
事業が成長してくると融資限度額が物足りなくなり、メガバンクなどへの乗り換えが必要になってきます。
将来事業が拡大し、信用金庫からの卒業が見えてくるような規模になった場合は、今後の金融機関との付き合い方を検討しましょう。
ATMの設置数が少なくネット対応が弱い
信用金庫は大手銀行と比較すると、返済用のATMの設置数が少ないため、以下のようなデメリットが考えられます。
- 思い立った時に返済することが難しい
- 信用金庫の商圏から離れた途端に返済方法が限られてしまい返済のために時間を作る必要がある
また、信用金庫はインターネットでの対応に弱く、基本的に窓口に来店しないとできない事が多いです。
最近はネットだけで口座開設や資料請求などを完結できる銀行が多いので、信用金庫は手続きが面倒な点もデメリットといえます。
加えて、信用金庫はメガバンクほど有名ではないので、信用度の面でもメガバンクより劣るでしょう。
両方に口座がある場合はメガバンクを決済口座にした方が信頼性が高くなります。
金利が割高
信用金庫は他の金融機関と比較して、金利が高く設定されているケースが多いです。
信用金庫はメガバンクと比べると1%程度、地方銀行と比べても0.5%程度融資金利が高く設定されています。そのため、長期の借入が負担になりやすいこともデメリットです。
- 保有している金融資産が少ないため収益を出しにくい
- ひとつひとつの取引額が小さく、事務処理や営業マンに負担がかかってしまう
しかし、近年はメガバンクよりも安い金利で融資する信用金庫も出てきています。
金利は信用格付けによって決まるため、メガバンクの格付けが低く、信用金庫の格付けが高い場合は金利が逆転することもあります。
上記のように、信用金庫の融資にはメリット・デメリットの両面があります。
しかし地域に根差した経営をするなら、信用金庫から融資を受ける方法は有効といえるでしょう。
信用金庫は中小企業の安定した資金供給源となりますので、賢く付き合うことをおすすめします。
信用金庫の融資の審査を通すコツ
信用金庫へ融資を申し込む際に「審査に通るかどうか」不安を感じる方も多いことでしょう。
信用金庫によって審査基準は異なり、経営状態によっては断られる可能性もあります。
信用金庫の融資の審査を通すコツとして以下の3つが挙げられます。
- 書類に不備がないよう提出前に確認する
- あらかじめ自己資金を貯めておく
- 事業計画書をしっかりと作成する
それぞれ詳しく解説するので、融資を申し込む前にしっかり準備をしてから審査にのぞみましょう。
信用金庫の融資の審査における個人と法人の違い
信用金庫の審査は、個人と法人では「申し込み時に必要な書類」や「審査の通りやすさ」の点において大きく異なります。
申し込み時に必要な書類 | 審査の通りやすさ | |
---|---|---|
個人 | 必要最低限の書類 | 収入が少ない場合は通りにくい |
法人 | 多種多様な書類 | 黒字で書類に不備がなければ通りやすい |
個人の融資の審査には最低限のものしか必要ありませんが、法人の場合は多種多様な書類が必要です。
また、個人事業主は法人よりも自己資金を用意しづらいため、見かけ上の収入が少ないと融資を断られる可能性が高くなります。
一方で、信用金庫の審査ではきちんと利益を出し、納税しているかどうかは重要なポイントです。
黒字で納税しており、かつ融資資金の用途や返済計画を明確に示せれば、審査に通る可能性は高まります。
節税も大切ですが、資金調達のためにも確定申告と納税は確実に行いましょう。
信用金庫の融資審査では、個人と法人で異なる点がいくつかあります。
個人の場合、主に信用情報や収入の安定性が重視されます。
一方、法人の場合は、事業計画、財務状況、経営者の資質などが評価の中心となります。
各々の状況に応じた準備が必要です。
信用金庫のフリーローンの審査は厳しい?
信用金庫の審査は銀行と比較して緩いと思われがちですが、ほとんどの場合保証会社の審査が入るため同等と考えていいでしょう。
信用金庫の審査が銀行や他の金融機関と異なる点は、以下の2つです。
- 家や勤務先が信用金庫の商圏に入っているかどうかが審査に影響する
- 事業内容が地域の経済活動に貢献している場合は審査で考慮される
信用金庫は地域の人々の相互扶助を目的としている金融機関なので、地域内に関わりのある人の方が融資を受けやすくなっています。
対して、信用金庫の商圏外で生活している場合は、銀行やノンバンクのカードローン以上に審査が厳しくなることがあります。
信用金庫のフリーローンを利用する際には、原則自分が住んでいる地域か勤務先がある地域の信用金庫に申し込みましょう。
融資限度額は信用金庫によって異なりますが、10万円~500万円までで設定していることが多いです。
また、融資期間は10年以内で設定されていることが多く、余裕を持って返済していくことができます。
また、信用金庫のフリーローンは、銀行や消費者金融の商品と比べて知名度では勝てないことが多いです。
そのため、各種キャンペーンを行って集客をしており、銀行や消費者金融の商品よりもメリットが大きくなる可能性があります。
信用金庫の融資の審査を理解し、前もって準備をしよう
信用金庫の融資の審査について説明しました。
信用金庫は地域に根づいた事業を行っている関係上、自身や法人の住所が信用金庫の商圏内に入っているかどうかが審査に大きく関わってきます。
大口の融資を受けたいのであれば会員になる必要があるので注意しましょう。
また、地域密着型であるがゆえに貸し渋りや貸し剥がしのリスクが少なく、中小企業への融資にも積極的です。
ただし、融資限度額が控えめな上、ATMの設置数が少ないこともあり、返済が面倒なので注意が必要です。
銀行やノンバンク、日本政策金融公庫と並び、万が一の際に資金を用意する方法としてしっかりと頭に入れておきましょう。