事業を成長させていくうえで、運転資金の確保は欠かせません。
特に商品の仕入れや人件費の支払いなど、先行してお金が出ていくことも多く、資金が不足することも多々発生します。
本記事では、融資担当者の視点から、運転資金の基礎的な考え方や融資を受ける際のポイントをわかりやすく解説します。
融資を受ける機関の選び方や事前準備、審査に通りやすくするコツについてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
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運転資金とは
日々の事業活動を、安定して回していくために必要な資金を「運転資金」と呼びます。
どんなに売上や利益があっても、手元資金が足りないと支払いが滞ってしまい、「黒字倒産」というリスクを抱えることになります。
はじめに、運転資金の定義や用途・用意しない場合のリスクについて見ていきましょう。
運転資金の定義
運転資金とは、企業や事業者が日常的な経済活動を円滑に行うために必要な短期資金のことです。
事業を継続させるためには、仕入れ費用や経費が必要となりますが、売上として現金が入金されるまでには時間差があります。
そのギャップを埋めるために必要となるお金が、「運転資金」です。
運転資金の用途
運転資金は、具体的には以下のような用途に使われるのが一般的です。
- 商品や原材料の仕入れ代金
- 人件費やオフィス家賃などの経費
- 急な支払いに備えて確保しておく手元資金
売上が後から入金される場合でも、これらの支払いは待ったなしで発生するため、運転資金が不足すると業務が立ち行かなくなります。
運転資金を用意しない場合のリスク
企業は、商品を仕入れ在庫として保有している間や、商品を販売してから入金があるまでの間も、経費などの支払いを続けなければなりません。
もし運転資金が確保できていないと、先行する支払いができずに事業活動そのものがストップしてしまう可能性があります。
運転資金がないと、黒字決算でも「キャッシュが足りない状態」、いわゆる「黒字倒産」を起こすリスクが高まります。
健全な経営を続けるためには、売上高だけでなく潤沢な手元資金を用意し、キャッシュフローをしっかりと管理することが非常に重要です。
黒字倒産とは、商品が売れて帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足し、倒産してしまうことを言います。自社の入出金状況を把握し、キャッシュフローがプラスになるような経営を心掛けることで、黒字倒産を回避することができます。
J-Net21「黒字倒産とはどのようなものでしょうか?また、そうならないためにはどうしたらよいのでしょうか?」

必要な運転資金の目安や計算方法
必要な運転資金の額は、企業規模や業種によって大きく異なります。
どれくらいの運転資金を確保すればいいのかは、業種ごとの特性や回収サイト(売上が入金されるまでの期間)を加味して計算することがポイントです。
業種別|運転資金の目安
業種によっては、在庫保有の期間や売上回収までの期間が異なるため、必要となる運転資金にも差が出ます。
下記に業種別で目安となる運転資金の必要額をまとめました。
【業種別の必要な運転資金の目安】
業種 | 必要な運転資金の目安 | ポイント |
---|---|---|
小売業 | 月商の2~3ヵ月分 | 売上は現金収入が多いが、在庫を抱えている期間の資金を確保する必要がある |
製造業 | 月商の6~9ヵ月分 | 原材料の仕入から製造・販売・回収までの時間が長くなる傾向がある |
飲食・サービス業 | 月商の1~2ヵ月分 | 現金売上が中心で在庫負担が少なく、比較的短期の運転資金で賄いやすい |
建設業 | 月商の4~6ヵ月分 | 工期が長いことが多く、売上金の回収までに時間がかかる |
運転資金の計算方法
理論上の運転資金は、下記の式で求められます。
◆運転資金=売上債権(売掛金や受取手形)+ 在庫-買入債務(買掛金や支払手形)+ 現預金(月商の1ヵ月程度)
計算で必要となる「売上債権」「在庫」「買入債務」は、あくまで直近の数値や今後の計画を踏まえ、現実的な数値を入れましょう。
将来的に売上が大きく伸びることが見込まれる場合や、一時的に在庫を積み上げる必要がある場合は、その増加分も加味する必要があります。
運転資金を計算するときの注意点
運転資金を計算する際は、「運転資金」「設備資金」「投資資金」などを区別して考える必要があります。
工場建設や機械購入などは設備資金、株式や債券などの有価証券の購入は投資資金に分類され、原則として運転資金とは別枠で資金計画を立てましょう。
運転資金を正しく把握することで、資金繰りが不安定になることを未然に防げます。
運転資金の融資を受けられる機関
運転資金を調達したい場合は、銀行や公的機関・ノンバンクなど、さまざまな選択肢があります。
ただし、融資可能な金額や条件、審査の厳しさ・スピードなどは、それぞれ異なります。代表的な借入先とその特徴を確認していきましょう。
銀行融資(プロパー融資や信用保証付き融資)
銀行は運転資金の主要な調達先のひとつです。
銀行融資では「理論上の運転資金(売上債権+在庫-買入債務+現預金)」を基準に、貸し倒れリスクを見ながら厳しい審査が行われます。
そのため、創業間もない事業者や個人事業主など、信用度が未知数の事業者が運転資金の融資を受けるのは難しいでしょう。
売上債権や在庫、買入債務の回転期間が平均より長いと、不良債権や不良在庫のリスク、あるいは支払いの先延ばしが疑われるケースもあります。
銀行との面談時には、なぜ回転期間が業界平均より長くなっているのかを明確に説明できるよう、根拠資料を用意しておくことが大切です。
実際に不良債権や不良在庫が発生している場合は、その額を除いた範囲でしか融資を受けられないこともあるため注意が必要です。

日本政策金融公庫の新規開業資金融資
事業計画をしっかり立てて「返済能力がある」と認めてもらえる状態なら、日本政策金融公庫の「新規開業資金融資制度」を活用して運転資金を調達できます。
最高4,800万円までの融資も可能なため、自己資金が少なく、銀行からの借入が難しい創業期の事業者にとっては大きな支えとなるでしょう。
ただし、審査においては「計画の実現性」と「返済能力」が重視されるため、事業計画書の作り込みが重要です。
ノンバンクなどのビジネスローン
ノンバンクが扱うビジネスローンは、審査が比較的簡単で、かつ融資までのスピードが早いのが特徴です。最短で即日融資が可能なビジネスローンも存在します。
銀行融資や公庫融資に比べて金利は高めで融資額も少額ですが、「急場しのぎ」としては選択肢のひとつです。
金利は年率10~18%のビジネスローンが多いため、返済が長期になると返済負担が重くのしかかります。できれば6ヵ月以内、理想は2~3ヵ月以内に返済するよう計画的な利用が必要です。
補助金や助成金
「運転資金の借入」ではないものの、補助金や助成金を活用することで、実質的にキャッシュフローの改善を図ることも可能です。
多くは事業開始初期に必要となる費用の2/3程度までを補助する制度が多く、金額はおおむね200万円程度までのものが一般的です。
ただし採択には審査があり、事業計画書を提出して合格しなければならない点に注意しましょう。返済が不要な分、競争率は高くなりがちです。
参考:日本商工会議所公式サイト「商工会議所が支援する融資制度・補助金」
運転資金の融資を受ける時の準備
銀行や公庫などから運転資金を借りる場合、ただ「お金が足りません」と説明するだけでは、十分な額を借りるのは難しいでしょう。
希望する運転資金を借りるには、融資の必要性と返済能力を数字で明確に示し、説得力ある資料を揃えることがポイントです。
運転資金の融資では明確な説明根拠が必要
運転資金融資は、設備資金などと比べ「具体的に何を買うのか?」が明確になりにくい融資です。
そのため、必要額を示す際には、直近の決算や売上債権・買入債務などの数値を根拠に「どれくらいのキャッシュが不足するのか?」「なぜ運転資金が必要なのか?」といった、説得力ある説明を心がけましょう。
また、設備投資や有価証券購入などの投資資金とは区別したうえで話を進めることもポイントです。
融資申込書を作成し事業内容や取引状況を記載する
融資申込書を作成し、借入希望額や資金使途、返済原資、返済期間、担保条件、融資希望日などを整理しておくと、金融機関との打ち合わせがスムーズです。
さらに、主要な仕入先や販売先との取引条件、市場動向や競合状況などをまとめておけば、銀行担当者が作成する稟議書にも説得力を持たせることができます。
過去3期分の税務申告書と決算書を用意する
金融機関や公的機関に融資を申し込む場合は、直近3期分の税務申告書と決算書の提出を求められるケースがほとんどです。
売上高や利益水準、自己資本比率、キャッシュフローの状態など、企業体質をチェックするための重要資料となるため、不備がないように準備しましょう。
保証協会や公庫融資は指定の書類を準備する
信用保証協会付きの融資や日本政策金融公庫の融資を利用する場合は、各機関が指定する書類の提出が必要です。
事業計画書の様式や、資金繰り表、設備資金であれば見積書など、細かい条件が定められていることがあります。事前にチェックリストを入手して抜け漏れなく用意しましょう。
運転資金の融資を受けやすくするコツ
運転資金を円滑に借り入れできるかどうかは、最終的に「その企業の将来性」と「返済能力」にかかっています。
銀行や公的機関が、「安心してお金を貸せる」と思えるだけの客観的根拠を提示できるかどうかが勝負です。
借入期間分の現実的な事業計画を立てる
融資の返済期間が3年であれば、その期間にわたる売上計画や利益計画を具体的に策定する必要があります。
売上を「平均単価 × 顧客数 × 購買頻度」などに分解し、なぜその数字が妥当なのかを説明できるようにしておきましょう。
市場動向や競合他社の動きにも言及すると、より説得力が増します。

現実的な資金計画を立てる
事業計画だけでなく、資金繰り計画もきちんと示すことが大切です。
売上が想定より落ち込んだ場合でも、返済できる体制を整えているかどうかは、金融機関にとって重要なポイントです。
たとえば「売上が計画の80%にとどまったとしても返済が回る」ことを示せれば、リスク管理が行き届いていると評価されやすくなります。
社長の想いをしっかり伝える
意外かもしれませんが、融資担当者が書く稟議書には、経営者の人柄や事業に対する熱意が盛り込まれることも少なくありません。
数字の根拠がしっかりしているうえで、社長自身がどんなビジョンを持ち、なぜこの事業に取り組んでいるのかをしっかりと伝えると、金融機関の理解と共感も得やすくなります。
個人事業主でも金融機関で運転資金の融資を受けられる?
個人事業主であっても、安定した売上や継続的な経営実績があれば、金融機関から運転資金を借りることは十分可能です。
ただし、事業の開始直後や自己資金が乏しい場合などは、融資先の選択肢が限られる場合もあります。
個人事業主が融資を受けられるケースと受けられないケース
3~5年ほど事業を継続し、安定した売上や黒字決算を続けている個人事業主であれば、銀行融資も十分に検討できます。
銀行は返済能力を重視するため、過去の決算書や納税実績などをしっかり提示できる人ほど、審査に通りやすくなる傾向があります。
一方、開業前や開業直後は実績が乏しく、売上や利益も安定しにくいため、銀行融資の審査は厳しくなりがちです。
融資を受ける際には、事業計画書や今後の収益見込みをしっかり示すことが重要です。
たとえ小口の融資でも、返済実績を積み重ねることで、将来的に大きな額の融資が受けやすくなります。したがって、実績を作りながら徐々に信用を高めることが、融資獲得の近道と言えます。
個人事業主におすすめの借入先
公的機関である日本政策金融公庫には「新規開業資金」や「一般貸付」などの制度があり、事業計画がしっかりしていれば、個人事業主でも運転資金の借入は可能です。
とくに創業間もない時期は、実績が少ない分、銀行よりも公庫のほうが審査を受けやすい場合があります。
また、地元の信用金庫は地域密着型で、小規模事業者への融資に積極的です。
地域経済の活性化を重視しているため、融資担当者が事業内容や将来性を評価してくれるケースも多いでしょう。
加えて、信用保証協会の保証を付けることで、銀行の融資ハードルを下げることができる場合もあります。
信用保証協会が一定のリスクを肩代わりしてくれるため、金融機関が安心して融資を実行しやすくなるのです。
こうした機関や制度を活用しながら、少しずつ実績を積み重ねておくことで、将来的に大きな融資や有利な条件で資金調達がしやすくなります。
参考:一般社団法人全国信用保証協会連合会「信用保証のお申込みの流れ」
個人事業主が運転資金を借りる際の融資額
日本政策金融公庫の、新規開業資金融資における運転資金の上限額は4,800万円となっています。
また、民間金融機関の信用保証付き融資については、事業規模や信用状況によって異なりますが、数百万円~数千万円程度までの融資が一般的です。
融資を受けたいなら自己資金も用意しておくのがポイント
創業間もない段階では、融資担当者は「自己資金がどれだけ用意できるのか」も厳しく見ています。
一般的には、必要資金の10~30%程度を自己資金として準備していると、審査時の評価も高くなるでしょう。自己資金が全くない場合は、事業計画の実現性に疑いをもたれやすいため注意が必要です。
個人事業主が運転資金を借りるときの注意点
個人事業主として融資を受ける際は、事業計画や返済計画をより厳密に立てることが大切です。
銀行などは、個人資産(預金、不動産、有価証券など)を、担保や保証の裏付けとして評価することも少なくありません。
万が一、計画どおりに売上が伸びないときでも、返済に支障が出ないようにリスクシミュレーションをしておくとよいでしょう。

運転資金融資のまとめ
運転資金は、企業や事業の「血液」ともいえる重要な資金です。いくら黒字であっても手元資金が不足してしまうと、支払いが回らず「黒字倒産」を招きかねません。
事業運営を続けていくためには、「売上債権」「在庫」「買入債務」などを分析し、理論上必要な運転資金を把握することからはじめましょう。
融資を受ける際は、銀行やノンバンクなど自社に合った融資先を選び、事業計画や返済計画を示して金融機関からの信用を得るのがポイントです。